城氏 (平氏)

城氏（じょうし）

城氏は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて、現在の新潟県にあたる越後国を中心に活動した有力な武士団です。越後城氏とも呼ばれます。その出自は平氏にあり、特に常陸平氏の傍流である大掾氏の系統に連なるとされ、越後平氏と称されることもあります。

起源と勃興

城氏の祖は、平将門との戦いで知られる平貞盛（あるいはその弟平繁盛）の子孫にあたる余五将軍平維茂とされています。維茂の子とされる繁茂（または繁成、重衛）が城氏の事実上の始祖と考えられています。繁茂の子である貞茂（または貞成）が、当時の役職である城介（じょうすけ）の家の長男という意味で「城太郎」と呼ばれたことに由来し、以降、その子孫が氏として城氏を名乗るようになったと伝えられています。

彼らは越後国の北部地域を基盤として勢力を確立し、平氏政権が成立した時代には、さらにその影響力を拡大しました。越後国内では、阿賀野川や信濃川といった主要河川流域の国領や荘園を掌握し、会津地方や北信濃地域とも活発な交流を持っていたことがうかがえます。特に、関川を通じて日本海側の要衝である直江津に至るルートは、交流や物資、特に馬の輸送において重要な役割を果たしたと考えられています。

衰退と滅亡

城氏の運命が大きく傾くのは、源平の争乱期です。養和元年（1181年）、当時の当主であった城資永（または助長）は、平家によって信濃国で挙兵した源義仲の追討を命じられます。しかし、資永は命令を受けた直後に急死してしまいます。跡を継いだ弟の資職（または助職）は、横田河原の戦いで義仲軍と対峙しましたが、義仲の奇襲戦法に敗れました。その後、資職は平家から越後守の地位を与えられますが、城氏の勢力は急速に衰退の一途をたどります。

平家が滅亡し、源頼朝によって鎌倉幕府が開かれた後、資職は名を長茂と改め、梶原景時の仲介を得て鎌倉幕府の御家人として仕えることになります。『吾妻鏡』によれば、文治5年（1189年）の奥州合戦や、建久3年（1192年）の永福寺造営工事に加わったことが記録されています。しかし、建仁元年（1201年）、長茂は京において反乱を企て、いわゆる建仁の乱を起こしましたが、幕府軍によって討伐され、命を落としました。

これに呼応するように、城氏のかつての本拠地である越後国でも動きがありました。長茂の甥（資永の遺児）である城資盛と、その叔母（資永・長茂の妹）にあたる坂額御前が挙兵したのです。『吾妻鏡』には、越後国の鳥坂に城郭を築いて籠城したことが記されています。しかし、この反乱も佐々木盛綱率いる幕府軍によって鎮圧されました。この時、坂額御前は女性でありながらも、百発百中と言われるほどの弓の名手ぶりを発揮したと伝えられています。資盛は戦いの後に脱出して行方不明となり、これ以降、越後城氏は歴史の表舞台から姿を消し、事実上滅亡しました。

その後の城氏

越後城氏が滅亡した後も、「城」を名乗る人物は歴史に登場します。戦国時代には、越後の玉虫氏の出身とされる城景茂がいました。彼は上杉謙信の怒りを買って甲斐国に亡命し、武田信玄・武田勝頼父子に仕えました。武田氏滅亡後は徳川家康に仕え、旗本として7千石を知行しましたが、後に改易されています。また、江戸時代には城信茂が徳川秀忠に仕えて旗本となり、2千石を知行しました。彼らの知行地は武蔵国（現在の埼玉県熊谷市石原付近）にあり、城信茂の父とされる城昌茂は、同地にある東漸寺を開基したと伝えられています。これらの城氏は、越後城氏の系譜に直接連なるかは定かではありませんが、同じ氏を称する武士として歴史に名を残しました。

関連事項

安田氏 - 城氏の庶家とされる説があります。
建仁の乱 - 城長茂が起こした反乱です。
* 玉虫氏 - 戦国時代の城景茂の出自に関わるとされる越後の氏族です。

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