堀俊輔

堀 俊輔 - 指揮者としての歩み

日本の音楽界で多方面にわたり活躍する指揮者、堀 俊輔（ほり しゅんすけ）は、1950年6月3日に大阪府で生まれました。そのユーモラスな人柄から「ホリヤン」の愛称でも親しまれ、自ら「ヘルベルト・フォン・ホリヤン」と称することもあります。

大阪での幼少期を経て、早稲田大学文学部で英文学を専攻。その後、音楽の道に進むことを決意し、東京芸術大学指揮科に入学しました。指揮法を佐藤功太郎氏、ジャン・フルネ氏に、作曲を尾高惇忠氏に、そして音楽の基礎となるソルフェージュやスコアリーディングをアンリエット・ピュイグ＝ロジェ氏から学ぶなど、音楽家として幅広い素養を身につけました。

芸大卒業後は、国内の主要なオーケストラに次々と客演指揮者として招かれ、着実にキャリアを重ねていきました。これには読売日本交響楽団、新星日本交響楽団（現在は合併により存在せず）、大阪フィルハーモニー交響楽団、京都市交響楽団、九州交響楽団などが含まれ、全国各地でその手腕を発揮しました。

指揮者としての重要な転機の一つが、東京交響楽団との関わりです。1989年には同団の副指揮者に就任し、翌1990年の特別演奏会で正式なデビューを果たしました。1991年秋には、東京交響楽団の創立45周年を記念する世界ツアーに、当時の常任指揮者であった秋山和慶氏と共に指揮者として参加。同年10月には、ニューヨーク州のシラキュース交響楽団の定期演奏会を指揮するなど、国際的な舞台でも経験を積みました。

教育普及活動にも熱心で、2008年9月には東京交響楽団のクリエイティブ・アドヴァイザーおよび教育音楽・音楽普及担当として、クラシック音楽の普及や若手育成にも貢献しました。

堀氏は海外での研鑽も積極的に積んでいます。1999年には文化庁の在外研修員としてニューヨークに滞在し、メトロポリタン歌劇場でジェームズ・レヴァイン氏やヴァレリー・ゲルギエフ氏といった世界的なマエストロのもとで研鑽を積みました。この経験は、その後の活動に大きな影響を与えたと言えるでしょう。2001年9月にはロシアのサンクトペテルブルク音楽祭に出演し、同地のサンクトペテルブルク交響楽団を指揮する機会を得ました。さらに2003年4月には、ヴァレリー・ゲルギエフ氏に代わって、サンクトペテルブルクで開催されたプロコフィエフ国際指揮者コンクールの審査員に招聘される栄誉を受け、国際的な評価を確立しました。

活動の場はロシアにとどまらず、2004年にはポルトガルのリスボン・メトロポリタン・オーケストラに客演するなど、ヨーロッパ各地にもその活躍の範囲を広げていきました。2006年には、ドイツで開催されたシュトゥットガルト・バッハ・アカデミーにおいて、指揮者部門の最優秀賞を受賞するなど、海外でも高い評価を得ています。

合唱指揮者としても非常に知られており、二期会合唱団や藤原歌劇団合唱部など、多くのプロフェッショナルおよびアマチュア合唱団に客演しています。また、オーケストラ専属合唱団の育成にも力を入れ、東響コーラス（東京交響楽団）、東京シティ・フィル・コーア（東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団）、神奈川フィル合唱団（神奈川フィルハーモニー管弦楽団）といった団体では、創立指揮者として礎を築きました。

自身のプロデュースする活動として、1994年9月には声楽曲を中心とした演奏団体「オラトリオ東京」を創立し、翌1995年5月には旗揚げ公演を行っています。

現在、堀氏は中部フィルハーモニー交響楽団のプロダクション・アドヴァイザーおよびレジデンス・コンダクター（正指揮者）として、その音楽活動の中心を置いています。

特に東京交響楽団との共同作業は実り多く、デュカス作曲「楽園とペーリ」やデュリュフレ作曲「レクイエム」といった作品の録音は、「レコード芸術」誌で特選を獲得するなど高い評価を得ており、他にも多数のCDがリリースされています。

指揮や音楽に関する著書も執筆しており、愛称を冠した『ヘルベルト・フォン・ホリヤンのモーツァルトは振るべからず』（1992年）、『ヘルベルト・フォン・ホリヤンの本日も満員御礼!』（2003年）などがあり、その親しみやすいキャラクターがうかがえます。

堀俊輔氏は、オーケストラ指揮、合唱指揮、教育活動、執筆活動と、クラシック音楽の多様な分野で貢献を続ける、日本を代表する音楽家の一人です。

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