塚崎のクス

塚崎のクス

鹿児島県肝属郡肝付町野崎にそびえ立つ「塚崎のクス」は、樹齢1200年以上と推定されるクスノキの巨木です。塚崎古墳群の一角、1号墳の円墳上に生育しており、その存在は古くから地域の人々に知られています。県内では3番目の巨木として知られ、1940年に国の天然記念物に指定されました。

歴史と背景

塚崎のクスが根を張る塚崎古墳群は、4世紀後半から5世紀前半にかけて築造されたと推定される古墳群です。前方後円墳5基、円墳39基からなり、その中でも花牟礼古墳は日本最南端の前方後円墳として知られています。古墳群全体が1945年に国の史跡に指定されており、この一帯が歴史的に重要な場所であることが伺えます。

塚崎のクスは、別名「塚崎の大クス」とも呼ばれ、地域の人々から神木として崇められてきました。この地は、島津氏の始祖である島津忠久が創建した大塚神社の境内地にあたり、神社の創建当初から神木として大切にされてきたと伝えられています。主幹には、地上約3メートルの位置に大きな穴があり、これは過去に大枝が折れた痕跡です。また、幹の中は空洞になっており、そこには大蛇が住み着いているという伝説や、戦乱の前兆として枝が折れるという言い伝えも残っています。

巨木の姿

肝付町役場によると、塚崎のクスの樹高は25メートル、目通り幹周は14メートルにも達します。幹や枝には、オオタニワタリをはじめとする様々な植物が着生しており、自然の生態系を形成しています。県内では、蒲生のクス（姶良市）や志布志の大クス（志布志市）に次ぐ巨木として知られています。

1940年には、「古墳ノ上ニ生ジ目通幹圍約十二．九メートル樹勢旺盛樹上ニハおほたにわたり其ノ他多數ノ植物着生ス 樟ノ巨樹トシテ有數ノモノナリ」という理由で国の天然記念物に指定されました。かつては樹高が35メートルもあったとされていますが、1993年の台風により幹の上部が折れ、現在の高さになりました。近年では、木の各所に腐朽が見られたり、幹の一部が空洞化したりするなど、樹勢の衰えが懸念されていました。

樹勢回復への取り組み

枯死の危機に瀕していた塚崎のクスを救うため、2007年度から2010年度にかけて樹勢回復処置が行われました。具体的には、枝や樹幹の着生植物を取り除いたり、防腐剤を塗布したりといった処置が施されました。現在も、この樹勢回復の取り組みは継続されており、巨木の保護に力が注がれています。

同名の巨木

佐賀県武雄市にも「塚崎の大クス」と呼ばれる同名の巨木が存在します。こちらのクスノキは、樹齢2000年とも3000年とも言われる巨木で、主幹は1963年の落雷によって大部分が失われています。武雄市には、「川古のクス」や「武雄の大クス」など、他にも有名なクスノキの巨木があり、これらの巨木と共に地域の人々から愛されています。

最近の被害

2022年9月には、台風14号の影響で、直径約1.3メートル、長さ約20メートルの枝が折れる被害に遭いました。自然の脅威にさらされながらも、塚崎のクスは今もなお力強くその姿を保っています。

アクセス

所在地：鹿児島県肝属郡肝付町野崎2238
交通：鹿屋市から車で約30分

まとめ

塚崎のクスは、その歴史的背景、巨木としての存在感、そして地域の人々からの崇敬を集める、まさに生きた文化財です。今後も、地域の方々の手によって保護され、その姿を未来へと伝えていくことでしょう。

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