塩見岳

塩見岳（しおみだけ）

概要

塩見岳は、長野県伊那市と静岡県静岡市葵区の境界に位置する、標高3,052mの山です。南アルプスの主稜線上、仙丈ヶ岳から続く仙塩尾根の南端にそびえ立ち、鉄兜のようなドーム型の山容が特徴的です。遠方から見ると独立峰のように見え、その存在感は際立っています。

山頂は東西二つの峰に分かれており、東峰が3,052m、西峰が3,047mと、東峰の方が標高が高いです。しかし、二等三角点は西峰に設置されています。山頂からは南アルプスの山々はもちろん、木曽山脈や富士[[山]]まで見渡せる絶景が広がります。また、山頂は伊那市の最高地点でもあります。

塩見岳は、日本百名山、新日本百名山、信州百名山にも選ばれており、その名を知られています。

山名の由来

塩見岳の名前の由来には諸説あります。

山頂から駿河湾が見えるため、「潮見」が転じたという説
山麓に塩の産地があったという説
製塩の煙が山頂から見えたという説

山麓の大鹿村には、鹿塩という集落や、鹿塩川、塩川という川があり、鹿塩温泉では天然の塩水が湧き出ていた歴史もあります。明治時代には製塩施設が設けられ、各地に出荷されていたそうです。

歴史的には、1909年の記録では「間ノ岳（赤石の間ノ岳）」と記述されていたり、三峰川上流の南荒川が源流であることから「荒川岳」とも呼ばれていましたが、大正初期になってから「塩見岳」という名前が定着しました。

環境

塩見岳は、海底に堆積した泥や砂が隆起してできた南アルプスの中央部に位置しますが、地理的には南アルプス北部とされています。山の上部は森林限界を超え、ハイマツ帯にはイワウメ、クルマユリ、クロユリなど多くの高山植物が群生しています。また、ライチョウの生息地としても知られています。山腹には針葉樹林が広がり、静岡県側は、かつてパルプの原料となる木材が伐採されていた歴史があります。山頂は麓の集落と比べて気温が約14℃低く、春先まで雪が残ることもあります。

近年、鹿などの野生動物による食害が問題となっており、高山植物の生態系を脅かしています。地元では、鹿の捕獲による「大鹿ジビエ」として地域ブランド化に取り組むなど、対策が進められています。

歴史

1902年：家中虎之介が測量のため登頂し、二等三角点が設置されました。
1917年：慶應義塾大学山岳部が赤石岳縦走の際に登頂しました。
1918年：木暮理太郎と武田久吉が南アルプス北部を縦走し登頂しました。
1935年：立教大学山岳部が積雪期に北俣尾根から登頂しました。同年、鹿塩温泉の経営者が三伏小屋を建設しました。
1960年頃：斎藤岩男が塩見小屋を開設しました。
1964年：南アルプス国立公園に指定されました。
1993年：鳥倉林道が開通し、登山者が増加しました。
1997年：塩見小屋でキャンプが禁止になりました。
2000年：塩見小屋で地下浸透トイレが廃止され、ヘリコプター輸送による処理に変わりました。

登山

塩見岳への登山は、1935年に三伏小屋が建設されてから一般化しました。現在では、鳥倉林道からのルートが最も一般的で、日帰り登山も可能です。長野県の山のグレーディングでは、体力レベルは10段階中の7、技術レベルは5段階中の4とされており、本格的な登山装備と経験が必要です。登山に適した時期は6月中旬から10月上旬頃までです。冬季は、山頂直下の北面バットレスが雪稜登攀の対象となります。

主な登山ルート

鳥倉林道ルート：鳥倉林道終点の登山口から三伏峠を経由して山頂を目指すルート。カラマツ林の急坂を登り、三伏峠からは南アルプスの縦走路と合流します。途中には水場や高山植物のお花畑があり、本谷山を経て塩見小屋、天狗岩を越えて山頂に至ります。
塩川小屋ルート：国道152号の鹿塩から塩川沿いに進み、塩川小屋から入山するルート。急な登りが続くため、上級者向きです。現在は、道路崩落のため通行止め、塩川小屋も休業中です。
塩見新道ルート：三峰川林道の大曲から入山するルート。塩見小屋の手前で南アルプスの縦走路に合流します。現在は、林道の崩落によりアクセスできません。
蝙蝠尾根ルート：南東の二軒小屋ロッヂから徳右衛門岳、蝙蝠岳を経由するルート。踏み跡が薄く、登山者は少ないです。
縦走ルート：南アルプスの主稜線を縦走する際に通過するルート。南北から塩見岳を目指すことができます。
積雪期ルート：本谷山と塩見小屋の間で、夏道とは異なるルートを辿ります。

山小屋

塩見小屋：山頂に最も近い山小屋で、完全予約制です。営業期間外は緊急避難用に一部が開放されています。
三伏小屋：かつて三伏峠から下った場所にありましたが、環境保全のため2003年に閉鎖されました。

交通・アクセス

長野県側（鳥倉林道）：
公共交通機関：JR東海飯田線伊那大島駅から夏季限定のバスで鳥倉登山口へ。
マイカー：中央自動車道松川インターチェンジから。
長野県側（塩見新道）：
公共交通機関：利用できる公共交通機関はなく、駅またはバス停からタクシーを利用。
マイカー：中央自動車道駒ヶ根インターチェンジまたは伊那インターチェンジから。
静岡県側（蝙蝠尾根）：
公共交通機関：静岡駅から畑薙第一ダム行きのバス。二軒小屋ロッヂまでは送迎バスを利用。
マイカー：新東名高速道路新静岡インターチェンジから。畑薙第一ダムの先は通行止めのため、指定駐車場を利用。

地理

塩見岳は南アルプスの主稜線上に位置し、北には安倍荒倉岳、新蛇抜山、北荒川岳が連なります。東には北俣岳、蝙蝠岳、徳右衛門岳を経て二軒小屋ロッヂへ続く尾根が、西には本谷山、入山、二児山を経て北北西に延びる尾根が、南には北俣尾根が延びています。

源流の河川

塩見岳を源流とする以下の河川は、太平洋に流れ込みます。

大井川西俣（南斜面）
* 三峰川の支流である南荒川（北斜面）

周辺の主な山

(リストは省略)

関連図書

(書籍リストは省略)

関連項目

(関連項目リストは省略)

外部リンク

(外部リンクリストは省略)

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