増山道保

増山道保：宇都宮の発展に尽くした「下水道市長」

増山道保（ますやま みちほ、1924年11月21日 - 1999年9月14日）は、日本の政治家であり、宇都宮市長を5期20年にわたり務め、宇都宮市の発展に大きく貢献しました。栃木県議会議員（3期）、宇都宮市議会議員（1期）も歴任しています。

生い立ちと青年期

増山道保は、1924年に栃木県宇都宮市塙田町で生まれました。父は有限会社増山貨物（現・増山貨物自動車株式会社）の創業者であり、8人兄弟の3番目の男子として育ちました。兄弟たちが宇都宮中学校（現栃木県立宇都宮高等学校）に進学する中、増山は家業を継ぐことを決意し、宇都宮商業学校（現栃木県立宇都宮商業高等学校）に進学しました。1944年には巣鴨経済専門学校（現千葉商科大学）を卒業。卒業後、大日本帝国陸軍に応召され、仙台陸軍予備士官学校に入学し、千葉県の司令部で終戦を迎えました。

戦後の事業と政治への道

第二次世界大戦後、増山は専門学校時代の友人と共に肝油を製造販売する会社を塩釜港で立ち上げ、6年間勤務しました。その後、宮城県の魚問屋から無償提供されたトラックと運転手・助手を伴い宇都宮に戻り、増山貨物を増山貨物自動車株式会社に改組し、専務に就任しました。専務という肩書でありながら、自ら重い荷物の積み下ろしも行い、一般社員以上に朝から晩まで働き続けました。

1963年の統一地方選挙で宇都宮市議会議員に立候補し、初当選。市議を1期務めた後、1967年から栃木県議会議員を3期務めました（自由民主党公認）。

宇都宮市長として

1979年、増山は渡辺美智雄の支援を受けて宇都宮市長選挙に無所属で立候補し、当選。以後、5期20年という長きにわたり市長を務めました。2期目以降の選挙は、事実上の信任投票となりました。市長在任中は、自由民主党内で栃木市長の鈴木乙一郎とともに栃木県連政調会の組織作りに取り組み、また、第21代全国市長会会長も務めました。1999年に市長を引退し、後継に梶克之を指名しましたが、梶は落選し、福田富一が次の市長となりました。

都市基盤整備への貢献

増山の市長としての最大の功績は、都市基盤整備に力を入れたことです。宇都宮市街を流れる釜川の洪水対策（日本初の二層式河川化）、下水道の整備、土地改良事業などを実現し、「下水道市長」とも呼ばれました。また、帝京大学理工学部の宇都宮市への誘致や、宇都宮市のテクノポリス指定・中核市移行にも成功しました。任期の最後には、自らも経験した宇都宮空襲の調査を事業化させ、死後、『うつのみやの空襲』として報告書が発刊されました。

市長当選1期目から掲げていた宇都宮競輪場の移転は任期中に凍結され、後任の福田富一が中止を決定。移転候補地であった瑞穂野地区の土地は、マロニエとちぎ緑花祭2000の会場を経て、みずほの自然の森公園となりました。

宇都宮市の基盤を整えたとの自負があり、「市政と市民との乖離」を訴えて当選した後任市長の福田との会談後に「これからやる人は、楽でいいよ」と思いを漏らしたといいます。

人物像

増山は、明るく気さくな人柄で知られ、地域行事にも積極的に参加しました。渡辺美智雄は彼を「お祭り市長」と呼びました。渡辺との友好関係は40年以上に及び、渡辺の命日の前日に亡くなったことに渡辺喜美は因縁を感じたといいます。庶民派でフットワークが軽く、釜川が氾濫した際には、長靴を履いて土嚢積みを行い、「長靴市長」と呼ばれることもありました。演説会では大きな身振り手振りを取り入れた独特の語り口で聴衆をひきつけ、政治家としての魅力を発揮しました。「よし、やっぺ」が口癖で、市職員を鼓舞しました。

若き日の増山貨物自動車の専務時代は、社員の運転手らから「頭の回転の速い切れ者」と評され、人一倍働いたことから、「みちほさん」と呼ばれ、親しまれました。気性の荒い運転手に喧嘩を吹っ掛けられることもあったが、「表へ出ろ」の一声で引き下がらせたというエピソードも残っています。

晩年と死

政界引退後は、表立った政治の場に姿を見せることはなく、趣味の山歩きや読書を楽しみ、奥日光に出かけることもありました。健康問題を理由に引退したため、食事療法にも取り組みました。家業の増山貨物自動車株式会社の会長も務めました。

1999年9月14日午前4時53分、脳出血のため74歳で死去。前日夜の渡辺喜美のパーティーに参加後、「疲れた」と家族に伝えて就寝、そのまま意識が戻らず亡くなりました。9月18日に告別式（葬儀委員長：渡辺喜美）、10月19日に宇都宮市文化会館で市民葬（葬儀委員長：福田富一）が営まれました。

評価と課題

多くの政治課題をこなした一方で、1989年には「行楽費」の名目で市職員にヤミ手当を支給していたことが発覚、1994年には懇親旅行に出かける市議会議員に現金を渡したとして公職選挙法違反で書類送検されるなど、負の側面もありました。市長時代後期には福祉や渋滞対策の遅れを指摘され、以前のように市長としての判断や展望を示す機会が減ったため、市長の前半期と後半期で評価が二分される人物であると評されました。

地元選出の衆議院議員・船田元とは、後半で考え方を異にしました。また、フジスタッフ（現・ランスタッド〔日本法人〕）創業者の増山瑞比古は道保の末弟ですが、道保の政界進出を機に瑞比古は増山貨物自動車を退職せざるを得なくなったため、確執を抱えていたといいます。道保は、政治のために会社の金に手を付けたとされましたが、戦後間もない時期に増山貨物自動車を支えた立役者であったため、代わりに瑞比古が犠牲になったという見方もあります。

増山道保は、宇都宮市の発展に大きく貢献した一方で、毀誉褒貶相半ばする政治家でした。しかし、その功績は宇都宮市民の記憶に深く刻まれています。

もう一度検索