外膜

外膜（がいまく、英: adventitia）は、動物の器官や血管、あるいは特定の細菌に見られる構造の最も外側に位置する層を指す言葉です。

体内器官と血管における外膜

体内における外膜は、血管や消化管、その他の臓器など、管状あるいは袋状の構造を包み込む最も外側の結合組織の層です。血管の場合、この層は特にtunica adventitia（外膜）とも呼ばれ、血管壁の構造としては中膜（tunica media）や内膜（tunica intima）とは区別されます。この外膜は血管本体の組織とは直接連続しない、比較的独立した結合組織であると考えられています。

外膜は、対象となる器官や構造を周囲の組織に固定し、支持する役割を果たします。特に腹腔内の器官では、外膜と漿膜という異なる被膜が使い分けられています。

漿膜に覆われる器官: 腹腔内に完全に位置する器官の多くは、漿膜によって覆われています。漿膜は、中皮という特殊な上皮細胞の層と、その下にある薄い結合組織から構成され、平滑で滑らかな表面を持ちます。腹腔内の漿膜は腹膜の一部（臓側腹膜）にあたります。
外膜に覆われる器官: 一方、腹腔の後方に位置する器官（後腹膜器官）や、一部の腹腔内器官でも、その外面は主に疎性結合組織である外膜によって覆われています。外膜は漿膜のような上皮層を持たず、周囲の結合組織と比較的連続しています。

消化管における外膜と漿膜の使い分け

消化管の壁は一般的に、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、そして最も外側の層という構造をとります。多くの消化管の最も外側の層は漿膜ですが、その位置によって外膜となる部分があります。

例えば、胸腔内にある胸部食道や、大腸の一部である上行結腸の上部や下行結腸、そして直腸の外筋層は、漿膜ではなく外膜によって境界されています。これはこれらの部位が腹腔後方や、腹膜に完全に包まれない位置にあるためです。十二指腸のように、一部は漿膜に覆われ、他の部分は外膜に覆われるという混在した構造を持つ器官もあります。また、胆嚢の肝臓に接する面は外膜によって覆われますが、それ以外の露出した面は漿膜によって覆われています。

細菌における外膜

グラム陰性菌と呼ばれる種類の細菌にも「外膜 (outer membrane)」と呼ばれる構造が存在しますが、これは動物の器官の外膜とは全く異なるものです。グラム陰性菌の外膜は細胞壁の外側に位置し、リポ多糖（LPS）を主成分とするユニークな膜構造です。この外膜は、グラム陽性菌の細胞膜にあたる内膜を包み込むように存在し、内膜との間にペリプラズム空間と呼ばれる層を持っています。グラム陰性菌の細胞壁の成分であるペプチドグリカン層は、このペリプラズム空間内に存在します。

細菌の外膜は、環境からの有害物質の侵入を防いだり、抗生物質への耐性に関わるなど、細菌の生存にとって重要な役割を果たしています。これは動物の組織における外膜が主に支持や固定を担うのとは、機能的にも構成成分的にも大きく異なります。

このように、「外膜」という言葉は、生体のマクロな組織構造と細菌のミクロな細胞構造という全く異なる文脈で使用されるため、その意味するところは文脈によって注意が必要です。

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