舟橋家

舟橋家：明経道の伝統と華族としての歴史

舟橋家は、明経博士として名を馳せた清原広澄を祖とする由緒ある家系です。代々、宮中で明経道（古代中国の経書を研究する学問）を以って仕え、押小路家とともに明経博士や大外記を世襲しました。少納言や式部少輔といった要職を歴任し、最高位は正二位侍従に上り詰め、多くの当主が天皇の侍読を務めたことで知られています。

室町時代には、清原業忠が公卿に昇進、養子の清原宣賢は明経道の研究と体系化に貢献しました。宣賢の娘たちは、時の権力者と深く関わりを持ちました。長女の智慶院は足利義晴に仕え、三淵晴員と結婚、細川幽斎を出産しました。また、宣賢の孫の娘であるいと（マリア）は細川家に仕え、細川幽斎の妻である玉（ガラシャ）のキリスト教への改宗を支援したと伝えられています。さらに、宣賢の曾孫には、豊臣秀吉に仕えた武将、平野長泰がいるという説もあります。

舟橋を家名としたのは、秀賢の代から。秀賢は後陽成天皇と後水尾天皇の侍読を務めた人物です。その後、伏原家が舟橋家から分家しています。江戸時代には400石の家禄を有し、幕末期には在賢と康賢父子が「廷臣八十八卿列参事件」に関与しました。

明治維新後、明治2年に華族に列せられ、明治17年には遂賢が子爵に叙爵されました。遂賢は京都宮殿勤當殿掌を務めた後、貴族院議員に当選。以後、再選を重ね、34年にわたって貴族院議員を務めました。その子である清賢も日本銀行に勤務した後、襲爵し、貴族院議員に3度当選しています。清賢の代には、舟橋子爵家の邸宅が東京市大森区上池上町にありました。

支流：武家・茶家舟橋氏と医家舟橋氏

舟橋家からは、いくつかの支流が派生しました。その中でも特に知られるのは、武家・茶家舟橋氏と医家舟橋氏です。

武家・茶家舟橋氏

清原宣賢の三男である等貴は、当初は相国寺の僧侶でしたが、還俗し、吉田牧庵吉賢と名乗り、医術で知られるようになりました。細川幽斎の母方の叔父にあたる縁で、丹後国田辺に住み、子孫は舟橋を称しました。吉賢から4代後の舟橋希賢は、木下順庵に儒学を学び、甲府徳川家の徳川綱豊（後の6代将軍徳川家宣）に仕え、奥詰儒者となりました。綱豊が将軍世子となると、それに従い、400俵取りの旗本となり、子孫も旗本として続きました。希賢はまた、茶道でも名高く、一尾流の茶人としても知られています。三斎流は、希賢から船橋蘆舟（直太郎）まで、家系で伝承されました。

医家舟橋氏

舟橋秀賢の末男である長庵元理は医術を業とし、その子である船橋玄晧は江戸幕府に召し出され、奥医師（将軍の侍医）を務めました。子孫も同様に奥医師を務め、700石の知行を有しました。

舟橋家は、明経道の伝統を継承し、華族として、そして武家や医家として、日本の歴史に多大な貢献を果たした家系と言えるでしょう。その歴史は、日本の歴史そのものを理解する上で重要な一端を担っています。

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