多久茂族

多久茂族（たく しげつぐ）：激動の時代を駆け抜けた佐賀藩士

多久茂族は、江戸時代後期に肥前国佐賀藩に生まれた武士であり、多久鍋島家（後多久氏）の11代当主です。彼は武士としての務めを果たしつつ、明治維新という激動の時代を生き抜き、その才能を内政官僚としても開花させました。

生涯

1837年、多久茂族は10代多久邑主・多久茂澄の長男として誕生しました。1847年に元服し、名を茂族と改めます。その後、長崎警備に従事し、武具方・御小物成方頭人、長崎仕組頭人、弘道館頭人といった要職を歴任しました。これらの経験は、後の彼の活躍の基盤となったと考えられます。

1855年には江戸桜田藩邸に入り、翌年京都を経て帰国。1864年には14代将軍・徳川家茂の上洛に伴い京都に赴任し、長州征討にも出陣しました。戊辰戦争では、多久領兵500名を率いて宇都宮に布陣し、会津城籠城戦ではアームストロング砲の指揮を執りました。明治元年には松平容保父子、会津藩重臣5名の東京への護送を担当しています。これらの出来事から、武士としての高い能力と責任感を持っていたことが伺えます。

明治維新後、1869年に明治政府に出仕し、弁官・弁事局出仕、その後少弁となります。1871年には浜松県権令、翌年には伊万里県権令に転任しました。彼は大蔵省に県庁を伊万里から佐賀に移転することを願い出て、伊万里県を佐賀県に改称し、引き続き権令を務めました。この功績は、地方行政における彼の貢献を示すものです。その後、官職を辞任しましたが、旧佐賀藩士のための炭鉱開発や士族授産に尽力し、社会貢献を果たしました。

人物像

多久茂族は、武士としての忠誠心と責任感、そして新しい時代への適応能力を兼ね備えた人物でした。激動の時代において、彼は常に自らの役割を理解し、その責務を全うしました。また、官僚としては、その行政手腕を発揮し、地方の発展に貢献しました。

家族

父：多久茂澄（1811-1843）
母：川崎娘域
室：鍋島安房娘雍
長男：多久乾一郎 - 男爵、東宮侍従

参考文献

秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
上田正昭他『日本人名大辞典』講談社、2001年。
多久市史編さん委員会編『多久市史 人物編』2008年、多久市。
安岡昭男編『幕末維新大人名事典』下巻、新人物往来社、2010年。
『佐賀県大百科事典』佐賀新聞社、1983年。
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成』下巻、霞会館、1996年。

多久茂族の生涯は、武士から官僚へと変化する時代の流れの中で、自らの役割を果たし続けた人物の姿を現代に伝えています。

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