多禰国

多禰国の概要

多禰国（たねのくに）は、かつて日本の地方行政区分であった令制国の一つであり、西海道に位置していました。この国の域は、現代の鹿児島県大隅諸島、具体的には種子島、屋久島、口永良部島を含んでいます。多禰国は702年から824年までの122年間にわたり存続しました。

名称について

多禰国は「多褹国」とも表記されるほか、国の代わりに「島」という字を使い「多禰島」と呼ばれることもありました。また、この国の国司を「島司」とする表現も見受けられます。日本書紀や続日本紀には、それぞれ多禰を島の意味合いで用いた記述が多く見られ、特に多禰に関連する記録は7か所、続日本紀では21か所に及びます。

歴史的経過

多禰国の初見は『日本書紀』の天武6年2月の条にあり、多禰島の住人が飛鳥寺へ饗応する様子が記されています。また、天武10年には使節団が多禰国の地図を作成し、天武天皇に提出したことが記録されており、これが日本で初めての地図作成に関する文献の一つと考えられています。

続日本紀には、大宝2年において、薩摩と多褹の地境に関して軍を発進させた記録が存在し、これは薩摩国と多禰国が同時に設置されていたことを示しています。更に、和銅7年には元明天皇から多褹島の公印が与えられた旨の記述も見られます。

遣唐使の歴史

多褹国は存在していた間に二度、遣唐使が帰国した記録があります。初回は734年に大使多治比広成が帰国したとされ、二度目は753年で、この時には鑑真を含む遣唐使船が多禰嶋を目指して航海しました。特に、鑑真の来日は日本における文化交流において大きな影響を及ぼしました。

廃止とその理由

多禰国は南島との交流、遣唐使の派遣、そして隼人対策の観点から重要視されていましたが、実際にはその税収は極めて限定的でした。行政経費の不足は大宰府が他の国から補填する形で解消されていました。しかし隼人との対策が落ち着くと、遣唐使の派遣経路の変更により多禰国の重要性が薄れました。824年には多褹嶋司が廃止され、四郡が再編成されて大隅国に編入されました。この決定には多くの考慮がなされた結果であり、都良香による太政官奏は名文として評価されました。

国内の施設と文化

多禰国の国府の場所は未だに定かではなく、様々な説があります。また、国の中には益救神社が存在しており、屋久島に鎮座しています。

まとめ

多禰国は日本の古代史において重要な役割を担った地域であり、その存続期間中に様々な歴史的事件や文化的交流が繰り広げられました。国としての形式が変わる中でも、多禰国の存在は今日に至るまで記憶されています。

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