多治比広成

多治比広成の生涯と業績

多治比広成（たじひ の ひろなり）は、飛鳥時代から奈良時代にかけての公卿であり、優れた漢詩人でもあります。左大臣の多治比嶋を父に持つ彼は、官位が従三位・中納言にまで昇進しました。今回の文章では、彼の経歴、人物像、官歴について詳述します。

経歴

広成の政治キャリアは和銅元年（708年）から始まりました。この年に、彼は従六位上から一気に三階昇進し、従五位下に叙爵された後、下野守に任命されます。その後も、地方の官職を歴任し、元明朝から元正朝にかけて越前守や能登国、越中国、越後国を管轄する按察使としても活躍します。また、和銅5年（712年）には従五位上、霊亀3年（717年）には正五位下を授与され、養老4年（720年）には正五位上に昇進します。

神亀元年（724年）、聖武天皇即位に際して従四位下に叙任されると、天平3年（731年）にはさらに昇格し従四位上となります。天平4年（732年）、彼は兄の縣守に次いで第10次遣唐使の大使に任命され、翌年の天平5年（733年）4月に難波津から唐へと向かいました。この訪唐からの帰国は天平6年（734年）11月で、無事に帰国した後には二階昇進し正四位上となります。

天平9年（737年）には、兄の中納言・多治比縣守と有力者の藤原四兄弟が相次いで亡くなると、彼は8月に参議、9月には従三位・中納言に叙任されました。これにより、広成は太政官の中での地位を一気に高め、天平11年（739年）4月には亡くなります。彼の最終的な官位は中納言従三位兼式部卿でした。

人物像

多治比広成は、漢詩人としても知られています。彼の詩は『懐風藻』に3首が収められており、その文学的才能が光ります。また、彼が遣唐大使として唐に渡る直前には、約30年前に第8次遣唐使として渡唐した山上憶良の邸宅に挨拶に訪れた際、憶良から贈られた和歌が『万葉集』に記されており、当時の交流を物語っています。

官歴

広成の官歴は、多治比家の歴史と共にある重要な要素です。彼の昇進は彼の能力を証明するものであり、まとめると以下のような略歴となります：

• - 時期不詳：従六位上
• - 和銅元年（708年）：従五位下（越階）、下野守
• - 和銅5年（712年）：従五位上
• - 和銅7年（714年）：左副将軍
• - 霊亀3年（717年）：正五位下
• - 時期不詳：越前守
• - 養老3年（719年）：能登・越中・越後按察使
• - 養老4年（720年）：正五位上
• - 神亀元年（724年）：従四位下
• - 天平3年（731年）：従四位上
• - 天平4年（732年）：遣唐大使
• - 天平7年（735年）：正四位上（越階）
• - 天平9年（737年）：参議、従三位・中納言
• - 天平10年（738年）：式部卿
• - 天平11年（739年）：薨去（中納言従三位兼式部卿）

結論

多治比広成の生涯は、日本の古代史における重要な時期において、文化と政治の両面で影響を与えました。彼の才能は文筆にとどまらず、官職においても高い地位にあり続けました。彼の業績は、今もなお多くの人々に記憶され、研究され続けています。

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