都良香

都良香（みやこのよしか）：平安時代の文人、その生涯と業績

都良香は、平安時代前期に活躍した貴族であり、優れた文人としても知られています。主計頭・都貞継の子として生まれ、初めは言道（ことみち）と名乗っていました。後に良香と改名し、文章博士として朝廷に仕えました。

官僚としての道

良香は、文章生として学問の道を歩み始め、文章得業生を経て、対策（官吏登用試験）に合格しました。その後、少内記に任官し、菅原道真が対策を受けた際には、その問答博士を務めるなど、早くから才能を発揮しました。太皇太后の葬儀では、喪に服すべき期間について、菅原道真と共に日本の法律や事例を研究し、適切な期間を提言しました。また、渤海からの使者を迎える際には、その対応にもあたり、自ら解文を作成して改名を願い出ています。その後、大内記、そして文章博士を兼任し、朝廷の重要な文書作成に携わりました。

大極殿火災と良香の進言

貞観18年（876年）には、大極殿が火災に見舞われました。この時、朝廷では廃朝と群臣が政務から離れるべきかどうかについて議論されました。良香は、同じ文章博士の巨勢文雄と共に、中国の例と日本の実情を考慮し、廃朝は行うが、天皇や群臣は平常の服装のままで良いと進言し、その意見が採用されました。この判断は、良香の知識と柔軟な思考力を示す出来事として知られています。

文人としての才能

良香は漢詩に非常に秀でており、歴史や伝記にも詳しい文人として、当時の都で広く名声を得ていました。その才能は漢詩にとどまらず、多くの詔勅や官符を起草しました。また、『日本文徳天皇実録』の編纂にも関わりましたが、完成を見ることなく亡くなりました。家集『都氏文集』には、詔勅や対策の策問など、良香の優れた文章が収められています。漢詩は『和漢朗詠集』や『新撰朗詠集』に、和歌は『古今[[和歌集]]』にそれぞれ収録されており、幅広い才能が窺えます。

多彩な著述活動

良香は、伝承を記した『道場法師伝』、『富士山記』、『吉野山記』などの作品も残しています。特に『富士山記』は、富士山頂上の様子を詳細に描写しており、良香自身が実際に登山したか、あるいは登頂者から詳細な情報を得ていたと考えられ、貴重な歴史的記録となっています。

逸話と伝説

良香には、漢詩にまつわる多くの説話が残っています。例えば、羅城門で良香の漢詩を唱えると、鬼がその詩句に感心したという話や、竹生島で弁才天から詩句を教わったという伝説があります。また、菅原道真との関わりを示す逸話も複数存在しており、道真が弓の名手であったという話や、道真に先を越されたことに怒って出家したという話などが伝えられています。これらの逸話は、良香が後世においても文人として高く評価されていたことを示しています。

官歴

良香の官歴は以下の通りです。

仁寿3年（853年）：大学寮に入学
貞観2年（860年）：文章生
貞観7-8年（865年-866年）頃：文章得業生
貞観10年（868年）：播磨権大目
貞観11年（869年）：対策に及第
貞観12年（870年）：少内記
貞観13年（871年）：見正六位上
貞観14年（872年）：掌渤海客使。諱を言道から良香に改名
貞観15年（873年）：従五位下、大内記
貞観17年（875年）：兼文章博士
貞観18年（876年）：兼越前権介、兼侍従
元慶元年（877年）：宿禰姓から朝臣姓に改姓
元慶3年（879年）：卒去（文章博士従五位下兼行大内記越前権介）

参考文献

渋谷栄一「都良香伝」各号（高千穂論叢）
中村璋八・大塚雅司「都氏文集全釈」汲古書院
武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録』戎光祥出版

まとめ

都良香は、平安時代前期に文章博士として活躍しただけでなく、漢詩や和歌、歴史や伝承など、多岐にわたる分野で優れた才能を発揮した人物です。その才能は、同時代の人々だけでなく、後世の私たちにも影響を与えています。彼の業績は、平安時代の文化を知る上で、非常に重要なものと言えるでしょう。

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