多聞通

多聞通：歴史と文化が織りなす神戸の街

多聞通は、兵庫県神戸市中央区に位置する町名です。JR東海道本線西側、国道28号北側にあり、オフィスビル、商店、住宅が混在する活気ある地域です。湊川神社など歴史的建造物も存在し、古くからの歴史と現代的な街並みが調和したエリアとなっています。郵便番号は650-0015です。

地理と近隣地区

多聞通は中央区南西部、市街地の中心部に位置します。北長狭通、元町高架通、相生町、中町通、兵庫区西多聞通、橘通、楠町といった地域に隣接しています。特に三丁目は、橘通によって二丁目と分断され、楠町にも接しています。この地域には、楠木正成を祀る湊川神社があり、歴史的な重要性を物語っています。

歴史：楠木正成と発展の歴史

多聞通の名称は、鎌倉時代後期の武将、楠木正成に由来します。正成の幼名「多聞丸」と、当地に存在したとされる正成の墓に因んでいるとされています。江戸時代には、この地が正成の墓所と認定され、青山幸利によって梅と松が植えられ、五輪塔が建立されたという記録も残っています。


明治5年（1872年）に成立した多聞通は、当初は「兵庫多聞通」と呼ばれていました。その後、神戸区、湊東区、生田区を経て、昭和55年（1980年）に中央区に編入されました。


明治時代初期、鉄道敷設に伴う市街地造成で、坂本村南部に新たな町が形成され、多聞通と命名されました。湊川神社、神戸駅、福原遊郭の近接という立地条件から、昭和初期には市内有数の歓楽街として栄え、湊東区役所も置かれていました。


歴史的出来事を時系列で見ていきましょう。


元禄4年（1691年）： 徳川光圀が「嗚呼忠臣楠氏之墓」の碑を建立。
文化年間（1804～1818年）： 楠木正成の墓域が約300㎡に拡大。
明治2年（1869年）： 正成の墓が湊川神社となる。
明治5年（1872年）： 坂本村の一部より多聞通成立。当初は二～八丁目まで存在。
明治7年（1874年）： 坂本村、宇治野町の各一部を編入し、一丁目が成立。
明治43年（1910年）： 神戸電気鉄道（後の神戸市電）春日野道～兵庫駅前間開通。
大正2年（1913年）： 市電兵庫線楠公前～西柳原間、平野線開通。
大正11年（1922年）： 市電大倉山～神戸駅前間開通。
昭和6年（1931年）： 湊東区役所設置。
昭和20年（1945年）： 戦災で湊東区役所焼失。七・八丁目は兵庫区西多聞通となる。
昭和43年（1968年）： 神戸高速鉄道開業。
昭和45年（1970年）： 市電廃止。
昭和55年（1980年）： 地域の一部が他の町名に編入され、一～五丁目となる。

人口変遷

多聞通の人口は、時代とともに変化してきました。


平成17年（2005年）： 世帯数329、人口610人
昭和63年（1988年）： 世帯数351、人口842人
昭和35年（1960年）： 世帯数649、人口2,367人
大正9年（1920年）： 世帯数968、人口5,027人
明治25年（1892年）： 戸数1,272、人口5,336人

多聞通の施設

多聞通には、天理教兵庫中央分教会、みなと銀行神戸駅前支店、湊川神社、神戸楠公前ビル、産経新聞社神戸総局、救世軍神戸小隊会館など、様々な施設があります。

まとめ

多聞通は、歴史と現代が交錯する、魅力的な地域です。楠木正成ゆかりの地として、また、かつての歓楽街としての面影を残しながら、現代の神戸を支える重要なエリアとして発展を続けています。

参考文献

神戸史学会 編『神戸の町名 改訂版』神戸新聞総合出版センター、2007年
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 竹内理三 編『角川日本地名大辞典 28 兵庫県』角川書店、1988年

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