大中臣伊度人

大中臣伊度人（おおなかとみ の いとひと）は、平安時代前期に活躍した貴族です。生没年は残念ながら不明ですが、彼の足跡は歴史の中に確かに刻まれています。

彼は中臣朝臣（のち大中臣朝臣）という氏姓を名乗り、神祇伯（じんぎはく：神祇官の長官）を務めた中臣逸志（なかとみ の いつし）の子として生まれました。官位は従五位下・木工助（もっこうのすけ）にまで昇っています。

伊度人の名前が歴史に登場するのは、清和天皇の治世、貞観8年（866年）のことです。この年、都の正門である応天門が焼失するという大事件が起こりました（応天門の変）。伊度人は木工大允（もっこうのだいじょう）という役職にあり、木工権大允（もっこうのごんのだいじょう）の藤原直宗（ふじわら の なおむね）とともに、再建に必要な木材を調達するため丹波国（現在の京都府北部）へと派遣されました。この任務は、都の復興を担う重要なものであり、彼の能力が朝廷から高く評価されていたことを示しています。

その後、伊度人は木工助（もっこうのすけ）に昇任します。陽成天皇の時代、元慶元年（877年）11月には従五位下（じゅごいのげ）に叙爵されました。これは、彼が貴族としての地位を確立したことを意味します。さらに同年12月25日（878年1月31日）には、伊度人を含む中臣石根（なかとみのいわね）の玄孫（孫の孫）にあたる19名が、中臣朝臣から大中臣朝臣へと改姓しました。これは、彼の一族が朝廷において特別な地位を占めるようになったことを示す出来事です。

翌元慶2年（878年）には、神祇伯・棟貞王（むねさだおう）とともに、伊勢神宮（三重県伊勢市）に奉幣使（ほうへいし：天皇の幣帛を奉る使者）として派遣されています。伊勢神宮は、皇室の祖先神である天照大神（あまてらすおおみかみ）を祀る、日本で最も重要な神社であり、この派遣は彼が朝廷から厚い信頼を得ていた証と言えるでしょう。

伊度人の官歴をまとめると以下のようになります。

時期不詳：従六位下
仁寿2年2月21日（852年3月15日）：伊勢神宮大宮司
貞観8年6月3日（866年7月18日）：見木工大允
時期不詳：木工助
* 元慶元年11月21日（877年12月29日）：従五位下

彼は多くの子に恵まれました。「中臣氏系図」によれば、長男は大中臣本扶（おおなかとみ の もとすけ）、次男は大中臣本自（おおなかとみ の もとより）、三男は大中臣本貫（おおなかとみ の もとつら）、四男は大中臣本真（おおなかとみ の もとざね）、五男は大中臣本宗（おおなかとみ の もとむね）、六男は大中臣本実（おおなかとみ の もとざね）と伝えられています。彼の子孫は、大中臣氏として代々朝廷に仕え、日本の歴史に名を残していくことになります。

大中臣伊度人は、平安時代前期という激動の時代に、朝廷の重要な任務を担い、一族の地位を高めた人物として、記憶されるべきでしょう。

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