大中臣有本

大中臣有本（おおなかとみ の ありもと）

大中臣有本は、平安時代前期に生きた貴族であり、神祇官において重要な役割を果たしました。彼の生涯は、神祇官としての活動を通じて、当時の朝廷における神事の重要性を示すものと言えるでしょう。

生涯

有本の出自は明らかではありませんが、常陸少掾・大中臣雄良の長男として生まれました。彼は清和朝から宇多朝にかけて、神祇官の官人として活躍し、最終的には正五位上にまで昇りました。

神祇官としての活動

有本の名前が記録に現れるのは、貞観9年（867年）のことです。この年、霖雨を止めるために畿内の諸神に祈りを捧げる際、神祇少副として諸社へ派遣されました。その後、貞観12年（870年）には、平野社の使者を務めています。

同年、伊勢神宮祭主・大中臣豊雄が亡くなったことを受け、貞観14年（872年）には有本が後を継いで祭主となり、従五位下に叙爵されました。祭主として、伊勢神宮における祭祀を司るという重要な役割を担うことになります。貞観16年（874年）には神祇大副に昇任し、同年には山城国稲荷の三名神に従三位を叙位する際の使者を務めました。貞観18年（876年）には、散位・基棟王とともに伊勢大神宮に派遣され、奉幣を行っています。

陽成朝に入ると、元慶元年（877年）には従五位上に昇叙され、以降も様々な神事に関与しました。元慶2年（878年）には、大極殿の造営に際し、壇上で百神に対して祈請を行っています。元慶3年（879年）には、斎宮・識子内親王の装束司を務めるとともに、群行の儀における対応を行いました。元慶4年（880年）には、大極殿の造営竣工を諸社に告げる際、稲荷社に派遣されています。元慶5年（881年）には、伊勢太神宮の例幣について、諒闇（清和上皇の喪）であったことから、散位・興我王とともに神祇官からの使として派遣されました。

また、元慶6年（882年）には、伊勢太神宮の例幣使の出発日が内裏での犬の出産と重なった際、過去の事例を引用して対応を決定するなど、豊富な知識と経験に基づいて神事を滞りなく行うことに貢献しました。

光孝朝では、元慶8年（884年）に正五位下に昇進。承和年間以降停廃されていた旧儀である御體の御卜の読奏を行い、伊勢大神宮の例幣使として、神祇伯・棟貞王とともに派遣されています。仁和2年（886年）には、斎宮・繁子内親王の装束司を務めました。

宇多朝に入り、寛平元年（889年）には大嘗会の功労により正五位上に至りました。しかし、寛平6年（894年）2月8日に亡くなりました。

官歴

有本は、以下の官歴を重ねています。

時期不詳：正六位上
貞観9年（867年）5月3日：神祇少副
貞観14年（872年）：祭主、従五位下
貞観16年（874年）正月：神祇大副
元慶元年（877年）11月21日：従五位上
元慶8年（884年）11月25日：正五位下
寛平元年（889年）11月：正五位上（大嘗会賞）
寛平6年（894年）2月8日：卒去

系譜

父：大中臣雄良
母：不詳
生母不詳の子女
長男：大中臣良臣
男子：大中臣夏水
男子：大中臣全臣
* 男子：大中臣定臣

大中臣有本は、平安時代前期の神祇官において、重要な役割を果たした人物でした。彼の活動は、当時の朝廷における神事の重要性を示すとともに、神祇官の官人としての職務がいかに多岐にわたっていたかを物語っています。

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