大井城 (美濃国)

大井城の歴史

大井城は、岐阜県恵那市大井町に位置する平山城です。阿木川の右岸、河岸段丘上に築かれました。古い地籍図から、一辺約70メートルの方形区画の曲輪があったと推定されています。

この城は、美濃国初代守護大名である土岐頼貞の兄、土岐定親の玄孫、原秀行によって永享7年（1435年）に築城されたと伝えられていますが、確たる根拠となる史料は発見されていません。史料上で初めて大井城の名が登場するのは、文明5年（1473年）の小笠原家長による東濃侵攻の記録です。

築城の背景

永享10年（1438年）、室町幕府の将軍、足利義教は鎌倉公方の足利持氏を討伐し自害させました（永享の乱）。この時、土岐持益は信濃国と美濃国の国境に近い大井の地に原秀行を派遣し、大井地域の守備を命じました。原秀行は、阿木川右岸の段丘上に大井城を築き、名を大井遠江守秀行と改めました。

戦国時代の動乱

応仁の乱、文明の乱の頃（1467年～1477年）、第8代美濃国守護の土岐成頼が西軍に加わり京都へ遠征しました。その留守を守護代の斎藤妙椿が東軍勢力から美濃を守っていました。文明5年（1473年）3月に山名宗全が没し、西軍の勢いが衰え始めると、斎藤妙椿は伊勢国へ攻め込みました。この機に乗じて、東軍は妙椿を牽制するため、信濃の松尾城主、小笠原家長と木曾家豊を東濃へ侵攻させ、大井城と土岐郡釜戸村の荻之島城を占領しました。

小笠原氏の支配下となった恵那郡の中心部は、その後も駐留が続きましたが、天文3年（1534年）に松尾小笠原氏が府中小笠原氏に攻められて甲斐国へ亡命し、東濃から撤退しました。これにより、岩村城を本拠とする遠山氏が勢力を盛り返し、大井城も岩村城の子城として組み込まれ、外郭防衛の一翼を担うようになりました。大井城には、遠山景任の重臣である藤井宗常・藤井常守兄弟が城主として入りました。

元亀3年(1572年)、武田信玄の東濃侵攻が始まると、岩村城は武田氏の重臣、秋山虎繁によって攻め落とされました。翌天正元年(1573年)には、大井城も武田氏の支配下に入りました。

落城と廃城

天正3年（1575年）、三河国での長篠の戦いに勝利した織田信長は、東濃から武田氏を駆逐するために織田信忠を大将とする大軍を派遣しました。この時、大井城も織田勢に攻められ落城し、その後廃城となりました。

現在の大井城址

現在、大井城址は恵那市立大井小学校の敷地となっています。平成8年（1996年）の新校舎建設と、平成21年（2009年）の新体育館建設工事に伴う発掘調査では、江戸時代の家屋跡や明治時代の劇場舞台小屋跡の遺構によって城の遺構は削られていましたが、空堀とみられる溝が発見されました。

関連情報

所在地: 岐阜県恵那市大井町字内城
指定史跡: 大井城跡（実際には鷹撃谷城を指す）
主な城主: 原秀行、藤井宗常、藤井常守

参考文献

阿部栄之助1923『濃飛両国通史』岐阜県教育会
恵那市教育委員会1999『大井城』恵那市文化財調査報告書第37集
恵那市教育委員会2009『大井城2』恵那市文化財調査報告書第41集
『恵那市史　通史編　第1巻』　第三編　中世　第三章　室町時代　三　小笠原氏の大井城攻略・大井城落城　p844～p848　恵那市史編纂委員会 1983年
『恵那郡史』第五篇　吉野時代・室町盛時　第十九章　大井城址　p127　恵那郡教育会　大正15年
『瑞浪市史　歴史編』　第四編　中世　第二章　室町時代の郷土　第四節　室町末期の兵乱　大井・荻之島城の戦　p390～p391　瑞浪市　昭和49年

関連項目

鷹撃谷城
岩村城
遠山氏

もう一度検索