大伴弟麻呂

大伴弟麻呂：奈良時代から平安時代初期を駆け抜けた名将の生涯

大伴弟麻呂は、奈良時代から平安時代初期にかけて活躍した、卓越した能力を持つ公卿であり、武人でした。彼は、数々の重要な役職を歴任し、日本の歴史に大きな足跡を残しています。その生涯を、詳細に見ていきましょう。

弟麻呂は、大和守を務めた大伴古慈斐の子として生まれました。彼の母は、名門藤原氏の出身である藤原殿刀自です。この出自が、弟麻呂の後の輝かしいキャリアに影響を与えたことは想像に難くありません。

彼の経歴は、宝亀10年（779年）に、従六位上から従五位下へ昇進したことから始まります。その後、彼は衛門佐に任命され、宮廷における地位を確固たるものにしていきました。天応元年（781年）には、従五位上に叙せられ、左衛士佐を兼任。さらに同年に、桓武天皇の生母である皇太夫人・高野新笠のために設置された中宮職の中宮亮という重要な役職にも就いています。このことは、弟麻呂が朝廷内でいかに信頼されていたかを如実に示しています。

地方官としての経験も豊富でした。延暦元年（782年）には常陸介に、翌年には征東副将軍に任命され、東国の地方行政に携わっています。これらの経験は、後に彼が蝦夷征討において重要な役割を果たすための土台となりました。

その後、弟麻呂は京官に復帰し、右中弁、左中弁を歴任。正五位下に昇叙され、皇后宮亮を兼任するなど、順調に昇進を重ねていきます。延暦10年（791年）には、従四位上に叙せられ、征夷大使に任じられました。これは、彼にとって大きな転換点となる出来事でした。

征夷大使に任じられた弟麻呂でしたが、延暦11年（792年）11月には辞表を提出します。翌年には、副将である坂上田村麻呂も辞表を提出する事態となりました。しかし、彼らの辞表は受理されず、延暦13年（794年）正月、弟麻呂はついに征夷大将軍に任命され、節刀を賜与されました。これは、彼にとって、そして日本の歴史にとっても極めて重要な出来事でした。史料に見える最初の征夷大将軍です。

同年6月、副将軍の坂上田村麻呂が蝦夷征討において大きな戦果を挙げ、弟麻呂の将軍としての役割は大きかったと考えられます。延暦14年（795年）正月には節刀を返上し、2月には征討の功績により、従三位・勲二等に叙せられました。

その後、蝦夷征討の任務は田村麻呂に引き継がれ、弟麻呂は東宮傅、治部卿といった京官を歴任しました。延暦25年（806年）、高齢を理由に辞職を願い出て許されると、大同4年（809年）5月28日に79歳で亡くなりました。

弟麻呂の官歴は、『六国史』に記録されています。その内容は、従六位上から従三位まで、着実に昇進を重ねていったことを示しています。彼は、地方官、宮廷官僚、そして軍事指揮官として、様々な役職を歴任しました。その多様な経験は、彼の優れた政治家、軍事指導者としての能力の高さを物語っています。

弟麻呂には、大伴東人、伴宇治人、伴勝雄ら複数の男子がいました。彼の子孫たちは、その後も朝廷や地方社会で重要な役割を果たし、大伴氏の繁栄に貢献したと考えられます。

大伴弟麻呂の生涯は、権力闘争や社会変動の激しい時代を生き抜いた、一人の傑出した人物の物語です。彼の功績は、日本の歴史に深く刻まれ、後世に大きな影響を与え続けました。彼の生き様は、現代においても学ぶべき点が多く残されています。

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