大倉御所

大倉御所：鎌倉幕府の始まりの地

大倉御所、または大蔵御所、大倉幕府は、鎌倉時代初期、源頼朝が鎌倉に築いた邸宅であり、その後の鎌倉幕府の拠点となった場所です。現在の神奈川県鎌倉市二階堂、西御門、雪ノ下3丁目一帯に位置し、1180年から1219年、あるいは1225年までの間、鎌倉幕府将軍（鎌倉殿）の御所として機能しました。

大倉御所の変遷

現在、清泉小学校とその周辺の住宅街が、かつての大倉御所の所在地とされています。この場所は「鎌倉市No.253 大倉幕府跡」および「No.49 大倉幕府周辺遺跡群」として知られ、埋蔵文化財包蔵地として保護されています。市街地化が進んでいることや、鎌倉時代初頭の遺構が地下深くにあるため、大規模な発掘調査は困難ですが、断続的な調査が行われています。

発掘調査の結果、御所の東端は現在の清泉小学校東辺にある東御門川（暗渠化）、西端は横国大附属鎌倉小学校の校舎と校庭の境界（西御門川が暗渠化）であることがほぼ特定されました。御所を囲む大溝（堀）、大型柱穴列、掘立柱建物跡などの遺構が発見され、当時の御所の構造を垣間見ることができます。

源頼朝による大倉御所の建設

源頼朝は1180年8月に挙兵し、10月に鎌倉入りしました。当初、父・源義朝の屋敷があった亀ヶ谷が候補地でしたが、手狭であったため、大倉の地が選ばれました。大倉は、鎌倉の外港である六浦と鎌倉を結ぶ六浦道沿いに位置し、四神相応の地としても適していたためです。

大倉御所の敷地は、東西約270メートル、南北約200メートル程度のほぼ方形で、寝殿、対屋、侍所、厩などが配置された、典型的な貴族の寝殿造でした。特に、頼朝の配下が詰めていた侍所は、貴族の邸宅の2倍の大きさで、18間（約37.8メートル）あり、厩は15間（約31.5メートル）で、奥州の名馬30頭を収容できる規模でした。これらの規模から、武家の総帥の邸宅としての特徴が伺えます。御所の周囲には、御家人の宿館が建ち並び、御所内には、寝所などの私的な空間と、政務を行う問注所や評定を行う西中門廊、内厩侍上などの公的な空間が設けられていました。

頼朝は1180年12月12日に上総広常の邸から完成した大倉御所に入りました。この儀式には多くの武士たちが従い、侍所には311人が2列に並びました。この出来事を『吾妻鏡』は「これから以降、東国の人々はみな、頼朝の徳ある道を進むのを目にして、鎌倉の主として推戴することになった」と記しています。それまで、漁民や農民が住む辺鄙な場所であった鎌倉は、この時、道を整備し、村里に名前が付けられ、家屋が建ち並び発展を始めました。

大倉御所の焼失とその後

大倉御所は1191年3月4日、1213年5月2日に焼失しましたが、その都度、同じ場所に再建されました。しかし、1219年12月24日に再び焼失した後は再建されず、将軍の御所は、北条義時大倉亭内南方の二階堂大路仮御所（1219年 - 1225年）、宇津宮辻子御所（1225年 - 1236年）、若宮大路御所（1236年 - 1333年）へと移転しました。ただし、この点については、鎌倉市史は1219年以降にも一時的な再建があったという説を採用しており、市の公式サイトでも仮御所の期間を数に含めていないなど、複数の見解があります。

この御所の移転問題は、北条義時と姉・政子、そして三浦義村の間の政争とも関連しており、1223年から翌年にかけての将軍御所の敷地拡張問題を巡る『吾妻鏡』の解釈にも影響を与えています。

大倉御所は、鎌倉幕府の歴史において非常に重要な場所であり、その後の鎌倉の都市形成の基礎となりました。その遺構は、現在も発掘調査によって少しずつ明らかになりつつあり、今後の研究の進展が期待されます。

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