大内初夫

大内 初夫（おおうち はつお）

大内 初夫（1928年〈昭和3年〉8月16日 - 2003年〈平成15年〉9月13日）は、日本の著名な国文学者であり、特に俳文学の研究で知られています。長年にわたり鹿児島大学で教鞭を執り、同大学の名誉教授となりました。

経歴

大正期末にあたる1928年、大分県日田市に生まれた大内氏は、九州大学の国文科を卒業後、同大学院で学びました。研究者としてのキャリアは、佐賀龍谷短期大学（現在の九州龍谷短期大学）で助教授を務めたことから始まります。その後、1958年に鹿児島大学に移り、教養部の助教授に着任。やがて教授へと昇任し、長きにわたって学生の指導と研究活動に従事しました。

大内氏の学術的な功績の一つとして、1982年に九州大学より授与された文学博士の学位があります。この学位は、氏の綿密な研究成果である「近世九州俳壇史の研究」によって得られたものです。この研究は、これまで十分に光が当てられてこなかった九州地方における近世俳壇の歴史を詳細に明らかにしたもので、俳文学研究において重要な貢献となりました。

1994年に鹿児島大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与された後も、その情熱は衰えませんでした。同年にノートルダム清心女子大学の教授として迎えられ、引き続き教育・研究活動を続けました。1999年には大学を退職しましたが、その後も研究者としての道を歩み続けました。

研究と業績

大内氏の専門は俳文学であり、特に芭蕉やその門弟たち（蕉門）に関する研究、そして前述の近世九州俳壇史の研究は特筆されます。また、向井去来や湖白庵諸九尼といった個性的な俳人たちの研究にも深く携わりました。

氏の研究成果は多くの著書や共編・校注書として結実しています。主要な著作には、

『芭蕉と蕉門の研究 芭蕉・洒堂・野坡考証と新見』桜楓社、1968年
『近世九州俳壇史の研究』九州大学出版会、1983年
『俳林逍遥 芭蕉・去来・諸九尼』勉誠社、1984年
『近世の俳諧と俳壇と』和泉書院、1994年

などがあります。

共編・校注の仕事も多く、貴重な古俳書や俳人たちの書簡集、俳論集の翻刻・校訂を手がけました。これらには以下のようなものがあります。

『湖白庵諸九尼全集』飯野松子、阿部王樹と共編 湖白庵諸九尼全集刊行会、1960年
『寛永廿一年誹諧千句』松江重頼編（校） 西日本国語国文学会翻刻双書刊行会、1962年
『九州古俳書年表稿』編 益山印刷所 (印刷)、1968年
『古典俳文学大系 10 蕉門俳論俳文集』大礒義雄と共校注 集英社、1970年
『翻刻松の響集・波掛集』義仲寺史蹟保存会 義仲寺叢書、1972年
『寛政期諸国俳人書簡集 太田可笛宛』田中道雄、石川八朗と共校訂 義仲寺史蹟保存会 義仲寺叢書、1973年
『蕉門俳論集』編 古典文庫、1974年
『天明期諸国俳人書簡集 富田杜音宛』と共校訂 落柿舎保存会 落柿舎叢書、1977年
『続・蕉門俳論集』編 古典文庫、1979年
『去来先生全集』尾形仂、櫻井武次郎、白石悌三、中西啓、若木太一と共編 落柿舎保存会、1982年
『向井去来 俳諧の奉行』日本の作家 若木太一と共著 新典社、1986年
『新日本古典文学大系 71 元禄俳諧集』櫻井武次郎、雲英末雄と共校注 岩波書店、1994年
『向井去来』編著 蝸牛社 蝸牛俳句文庫、1997年
『去来・凡兆』編著 蝸牛新社 大活字俳句文庫、2002年

これらの著作や編纂・校注書は、俳文学、特に近世俳壇の研究において、現在も参照される貴重な資料となっています。

晩年と死去

大学退職後も精力的に研究を続けていた大内氏ですが、2003年9月13日、脳出血のため、享年75歳で死去しました。長年にわたる学術への貢献が認められ、死去後には正四位勲三等旭日中綬章が追贈されました。

大内初夫氏は、九州という視点から近世俳壇史を解明し、また多くの古典俳書を現代に伝える重要な役割を果たした研究者として、日本の国文学史にその名を刻んでいます。

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