大和岩雄

大和岩雄の生涯：出版と古代史研究への情熱

大和岩雄（おおわ いわお、1928年2月15日 - 2021年6月20日）は、日本の出版業界に多大な貢献を果たした編集者、出版事業家であり、同時に古代史研究家としても知られています。大和書房と青春出版という二つの出版社を創業し、数々のベストセラーを生み出す一方で、古代史研究にも情熱を注ぎ、多くの著作を残しました。

生い立ちと初期の経歴

長野県上伊那郡高遠町（現在の伊那市）で、代々続く呉服商の家庭に生まれた大和岩雄は、生家の没落を経験します。高等小学校卒業後、名古屋の三菱重工業に就職する予定でしたが、官費で学べる長野師範学校（現在の信州大学教育学部）に入学。1948年に卒業すると、長野県下伊那郡大鹿村立鹿塩中学校で国語と音楽の教師として教鞭を執りました。しかし、同年12月には教職を辞し、長野市へと移り住みます。

出版の世界へ

長野市で大和は、山本茂実が主宰する人生誌「葦」に参加し、編集長としてその才能を発揮します。この「葦」での成功がきっかけとなり、1950年に上京。1951年には、文理書院と協力して「人生手帖」を創刊しました。しかし、「葦」が政治的に先鋭化したため、大和は同誌を離れます。

「人生手帖」は、1955年には7万部を記録するほどの人気を得ますが、その急成長ぶりに、讀賣新聞社会部から「自衛隊に対する日共の秘密工作機関誌」という虚偽の報道を受けます。これに対し、大和は「人生手帖」紙上で反論しましたが、1956年に編集長を辞任します。その後、同年5月に小澤和一と共に青春出版社を設立。実用書路線で成功を収めます。

1960年、大和は青春出版の経営権を小澤に譲り、新たに「青春の手帖」誌と共に別の出版社を設立。1963年7月には、この出版社を大和書房と改名します。1964年には、不治の病に冒された女子大生とその恋人の往復書簡集「愛と死をみつめて」が出版され、130万部を超えるベストセラーとなりました。

編集者からの転身

1966年2月4日、大和は札幌雪祭りに出かけ、帰りの飛行機をキャンセルします。その飛行機が全日空羽田沖墜落事故で墜落。新聞に死亡記事が掲載され、多くの弔電が届きましたが、大和は無事でした。同年11月14日に母を亡くしたことを機に、38歳で編集者を引退し、以後は経営に専念します。

古代史研究への傾倒

1974年、大和は鈴木武樹の提案を受け、季刊歴史雑誌『東アジアの古代文化』を創刊。鈴木が編集を降りた後は、終刊号まで編集長を務めました。この雑誌の編集を通じて、大和は自らも古代史研究に興味を持つようになり、多くの古代史研究書を執筆・刊行します。特に『古事記』や天武天皇に関する研究は、彼の独自の視点と解釈が際立っています。

晩年と業績

1988年、大和は社長職を退き、会長に就任。2021年6月20日、心不全のため東京都内の病院で93年の生涯を閉じました。

大和岩雄は、出版業界においてだけでなく、古代史研究においても重要な足跡を残しました。彼の著書は、古代史の謎を解き明かすための重要な資料となっており、その功績は長く語り継がれることでしょう。

大和岩雄の主な著書

大和岩雄は、数多くの著作を残しており、古代史研究を中心に幅広いテーマを扱っています。以下に主な著書を挙げます。

『日本古代試論』
『古事記成立考 日本最古の古典への疑問』
『古事記偽書説の周辺』
『古事記と天武天皇の謎』
『日本古代王権試論 古代韓国との関連を中心に』
『天照大神と前方後円墳の謎』
『「日本」国はいつできたか 日本国号の誕生』
『天武天皇出生の謎』
『天武天皇論』全2巻
『『古事記』偽書説は成り立たないか』
『人に好かれる知恵97章 愛される女性になるための秘訣集』
『神社と古代王権祭祀』
『神社と古代民間祭祀』
『邪馬台国は二カ所あった 邪馬台国から初期ヤマト王権へ』
『人麻呂の実像』
『信濃古代史考』
『天智・天武天皇の謎 『日本書紀』の虚偽と真実』
『人麻呂伝説』
『鬼と天皇』
『遊女と天皇』
『秦氏の研究 日本の文化と信仰に深く関与した渡来集団の研究』
『日本にあった朝鮮王国 謎の「秦王国」と古代信仰』
『十字架と渦巻 象徴としての生と死』
『魔女はなぜ空を飛ぶか』
『魔女はなぜ人を喰うか』
合本『魔女論 なぜ空を飛び、人を喰うか』
『天狗と天皇』
『神々の考古学』
『新邪馬台国論 女王の都は二ヵ所あった』
『箸墓は卑弥呼の墓か』
『日本書紀成立考　天武・天智異父兄弟考』
『神と人の古代学 太陽信仰論』
『続・秦氏の研究(日本の産業と信仰に深く関与した渡来集団の研究)』
『『古事記』成立の謎を探る』
『日本神話論』

共著・共編著

『藤ノ木古墳と六世紀 被葬者は誰か』黒岩重吾共著
『卑弥呼と邪馬台国』黒岩重吾共著
『邪馬台国の時代』黒岩重吾共著
* 『民衆史の遺産』全10巻 谷川健一共責任編集

これらの著書は、彼の多岐にわたる関心と、深い知識を示すものです。大和岩雄は、出版事業と古代史研究という二つの分野で、その情熱と才能を発揮し、後世に大きな影響を与えた人物と言えるでしょう。

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