大宮長興

大宮長興（おおみや ながおき）

大宮長興は、室町時代後期に活躍した官人であり、小槻氏の流れを汲む大宮官務家の当主です。左大史・大宮為緒の子として生まれ、号を喜弥軒、後に文決軒と称しました。法号は寿官。官位は正四位上・治部卿。

生涯

永享4年（1431年）に太政官の史の筆頭である左大史に任じられます。しかし、当時の官務の地位は壬生官務家が掌握しており、長興が任命されることはありませんでした。この状況に不満を抱いた長興は、室町幕府に直訴し、その結果、文安2年（1445年）2月に小槻氏長者・官務に任ぜられます。ところが、壬生家の壬生晨照がこれに強く反発し、同年11月には氏長者・官務の地位を奪い返されてしまいます。以後、大宮長興と壬生晨照の対立は長く続くことになります。

長興は、近衛家・一条家に家司として仕え、室町幕府との関係を維持することで壬生家に対抗しようとしました。宝徳元年（1449年）には官務が壬生晨照から大宮長興に移り、寛正6年（1465年）には再び大宮長興から壬生晨照に移っています。康正2年（1456年）には正四位上に叙されました。

応仁の乱は、大宮家にとって大きな痛手となりました。土御門大宮にあった大宮家の官文庫が焼失し、長興が宇治平等院に疎開させていた古文書なども軍兵によって紛失させられてしまったのです。官務の職掌は、朝廷の儀式・公事の遂行とそのために必要な先例の調査が主であり、先例の出典である官文庫・古文書の喪失は大宮家にとって致命的な打撃となりました。

文明10年（1478年）、長興は治部卿に任じられ、小槻氏で初めて八省卿となります。文明18年（1486年）に出家して寿官と名乗り、号も文決軒と改めて、養子・時元を補佐しました。しかし、応仁の乱後も自己の官文庫を維持した壬生官務家との格差は広がる一方でした。長興は86歳で亡くなりました。

有職故実に詳しく、日記『長興宿禰記』が今日まで伝わっていますが、多くの文物は応仁の乱で失われました。長興の死後、大宮官務家は急激に衰退し、52年後に姿を消すことになります。

官歴

康正2年（1456年） 正月5日：正四位上（『歴名土代』による）

系譜

父：大宮為緒
母：不詳
妻：不詳
男子：大宮寔包
養子：大宮時元 - 実は出雲国人佐波元連の子

参考文献

* 飯倉晴武「大宮長興」（『国史大辞典 2』吉川弘文館、1980年 ISBN 978-4-642-00502-9）

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