歴名土代

歴名土代（りゃくみょうどだい/れきめいどだい）

歴名土代は中世日本における四位および五位の位階補任、つまり叙位に関する記録をまとめた文書です。本来は2巻2冊から成っていましたが、現在現存しているのは1冊のみで、東京大学史料編纂所に所蔵されています。

この記録簿は、天文6年（1537年）に山科言継が編纂し、その後息子の言経がいくつかの加筆を行ったとされています。しかし、実際には言継自身が清原氏や広橋兼秀が所蔵していた『歴名土代』を元に書写し、記録を整理したことが識語に記されています。元々このような本は禁裏や公家などの家において公事の参考として編纂され、それぞれの家庭での貸し出しや校合が行われていました。こうした過程において、山科家の記録が他家のものよりも広く流通したと考えられています。

室町時代において、『康富記』や『親長卿記』、さらには『実隆公記』などの記録に、官位補任や「歴名」に関する校訂が行われたことが記されています。特に『実隆公記』には、三条西実隆が禁裏から「歴名」を借りて「歴名土代」を編纂したとされる記述があります。このことからも、歴名土代は公的な記録の一部として重要な役割を持っていたことがわかります。

東京大学史料編纂所には「歴名」という名称の記録があり、また国立歴史民俗博物館には「補任」と関わる『補略』と呼ばれる文書も所蔵されており、これらから「補任」が公卿を官位順に整理したものであり、「歴名」が親王・公卿・殿上人などを含む官位順の記録であったことが明らかになっています。また、「土代」は「土台」と同義であり、公文書の下書きを指すことがあり、このため「歴名土代」は主に四位・五位の叙位が予定されている個人を一覧化したもので、実際の叙位後に日付などが追記される形で記録が更新される仕組みでした。

歴名土代の紀年は南北朝時代北朝の貞和6年（1367年）が最古で、四位と五位の記録が揃ったのは応永6年（1399年）です。ただし、この時期の内容は抄出であり、詳細な記録は嘉吉年間以降に集約されています。記録の下限は慶長11年（1606年）であり、朝廷の官人だけでなく、中央や地方の武士や神官の叙位も含まれています。元々は2巻本で、上巻には四位、下巻には五位の情報が収められており、総収録数は4243名にのぼります。

歴名土代は『群書類従』にも掲載されていましたが、『新校群書類従』編纂時に文亀3年（1503年）から享禄4年（1531年）にかけて約120名分が欠落する事態も発生しました。その後、中世公家日記の研究を行っていた湯川敏治によって歴名土代のデータベース化が試みられ、1996年にはその研究を基にした翻刻版が発表されました。

この記録は、当時の日本の官位や公家社会、さらには武士や神官に関する理解を深める上で極めて重要な資料であり、後の研究の基盤にもなっています。

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