大山上

大山上（だいせんじょう）とは

大山上は、飛鳥時代に用いられた冠位の一つです。具体的には、大化5年（649年）から天武天皇14年（685年）までの期間に存在しました。この冠位は、当時の官僚制度における序列を示すもので、役人の身分や職務を定める上で重要な役割を果たしました。

冠位制度における大山上の位置づけ

大化5年（649年）に冠位十九階の制度が導入された際、大山上は19階のうち11番目に位置づけられました。この時、大山上は、上位の冠位である小花下（しょうかげ）の下、そして下位の冠位である大山下（だいせんげ）の上に位置していました。この制度は、当時の社会秩序を維持し、官僚組織を円滑に機能させるためのものでした。

その後、天智天皇3年（664年）に冠位制度が改められ、二十六階の制が施行されました。この改正により、大山は、大山上、大山中、大山下の三段階に分割されました。この時の大山上は、26階中13位に位置し、小錦下（しょうきんげ）の下、そして大山中（だいせんちゅう）の上に位置づけられました。この改正は、より細分化された官僚組織の階層構造を反映したものでした。

しかし、天武天皇14年（685年）に冠位の名称や制度が大幅に改められた際、大山上は廃止されました。これにより、大山上の冠位は歴史の中に姿を消すこととなりました。

大山上に叙位された人物

『日本書紀』や『続日本紀』には、大山上に叙位された人物として、以下のような人々が記録されています。

掃部角麻呂（かにもりのつのまろ）: 大化5年（649年）に小花下の三輪色夫（みわのしこぶ）とともに遣新羅使として派遣されました。これは、当時の日本が海外との外交関係を重視していたことを示しています。
安倍小殿小鎌（あべのおどのおがま）: 孝徳天皇の時代に、朱砂（辰砂）を採るために伊予国に派遣されました。これは、当時の日本における資源開発の状況を示すものです。
物部熊（もののべのくま）: 斉明天皇7年（661年）に後将軍大花下阿倍引田比羅夫（あべのひきたのひらふ）のもとで百済救援軍を率いました。これは、当時の国際情勢が日本の政治に大きな影響を与えていたことを示しています。
守大石（もりのおおいし）: 物部熊とともに、斉明天皇7年（661年）に百済救援軍を率いました。これらの人物の存在は、大山上が武官にも授けられていたことを示唆しています。
草壁吉士大形(くさかべのきしのおおがた):天武天皇10年(681年)に大山上から小錦下に昇叙され、同時に難波連の姓(カバネ)を与えられた。これは、大山上からさらに上位の冠位へと昇進する例を示しています。
中臣大島（なかとみのおおしま）: 天武天皇10年（681年）に川島皇子らとともに、帝紀や上古の諸事を記し定めるよう命じられた人物の一人です。これは、大山上が文官にも授けられていたことを示しています。
舎人糠虫（とねりのぬかむし）: 天武天皇11年（682年）に大山上から小錦下に昇進しました。これも、大山上から上位の冠位へ昇進した例です。

これらの人物の活動から、大山上という冠位が、当時の政治、外交、軍事、文化など、様々な分野で活躍した人々に与えられていたことがわかります。

まとめ

大山上は、飛鳥時代における冠位制度の一環として、官僚の序列を示す重要な役割を果たしていました。その短い歴史の中で、多くの人々がこの冠位を授かり、それぞれの分野で活躍しました。この冠位の変遷を追うことは、当時の社会構造や政治制度、そして人々の活動を理解する上で貴重な手がかりとなります。

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