中臣大島

中臣大島（なかとみ の おおしま）

中臣大島は、飛鳥時代に活躍した貴族であり、漢詩人としても名を残しています。中臣渠毎（許米）の子として生まれ、中臣金の甥にあたります。氏姓は中臣連から中臣朝臣、藤原朝臣、そして最終的に中臣朝臣へと変遷しました。官位は直大弐・神祇伯にまで昇りました。

生涯

中臣鎌足・金の後を継ぎ、中臣氏の氏長的立場として、天武・持統天皇の時代に政治の中枢で活躍しました。特に持統朝では神事における活動が目立ち、律令国家の確立期において、政治と祭祀の両面で重要な役割を果たしました。

天武天皇10年（681年）には、川島皇子や忍壁皇子らと共に、天武天皇から『帝紀』や上古の諸事（『本辞』『旧辞』など）を記録し、校訂するよう命じられました。大島と平群子首は自ら筆を執って記録したと伝えられています。同年12月には小錦下に叙せられました。

天武天皇12年（683年）には、伊勢王や羽田矢国らと共に、判官・録史・工匠らを率いて全国を巡行し、諸国の境界区分を行いました。しかし、この時は区分を完成させるには至りませんでした。天武天皇13年（684年）には、八色の姓の制定に伴い、連姓から朝臣姓に改姓し、その後、時期は不明ながら藤原朝臣姓に改姓しています。

朱鳥元年（686年）正月には、新羅使・金智祥を饗応するために、河内王、大伴安麻呂、境部鯯魚、穂積虫麻呂と共に筑紫に派遣されました。同年9月に天武天皇が崩御すると、同月末の殯宮で諸官人が誄した際、大島は兵政官のことを述べました。翌持統天皇元年（687年）8月には、持統天皇の命を受け、黄書大伴と共に300名の高僧を飛鳥寺に招集し、天武天皇の衣服で縫製した袈裟を与えました。その後、藤原不比等の台頭に伴い、大島は藤原朝臣姓から中臣朝臣姓に復姓しました。

持統天皇4年（690年）の持統天皇の即位の儀では、神祇伯として天神寿詞を読み上げました。翌持統天皇5年（691年）の大嘗祭でも同様に天神寿詞を読んでいます。持統天皇7年（693年）3月11日に賻物を与えられており、この日に亡くなったと考えられています。

人物

漢詩人としての才能も持ち、『懐風藻』には彼の漢詩作品が2首採録されています。また、草壁皇子のために粟原寺の建立を発願するなど、仏教への理解も示していました。

夫人である比売朝臣額田は、談山神社所蔵の「栗原寺三重塔伏鉢」の銘文から、80歳近くまで長生きしたことがわかります。岡部伊都子や梅原猛らは、比売朝臣額田を額田王に比定し、大島を額田王の再婚相手とする説を唱えましたが、額田王が臣籍降下したのなら「比売真人額田」となっているはずであり王族出身の額田王が「朝臣」姓を賜るということはありえないため、この説は成り立ちません。

官歴

天武天皇10年（681年）3月17日：大山上
天武天皇10年（681年）12月29日：小錦下
天武天皇13年（684年）11月1日：連姓から朝臣姓に改姓
朱鳥元年（686年）正月：直大肆
持統天皇4年（690年）正月1日：神祇伯
持統天皇7年（693年）3月11日：卒去（直大弐）

系譜

父：中臣渠毎
母：不詳
妻：不詳
男子：中臣馬養

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