大岡寺

大岡寺の歴史と変遷

大岡寺は、滋賀県甲賀市水口町に位置する天台宗系の寺院で、山号を龍王山と称します。本尊には千手観音を祀り、近江西国三十三箇所第26番札所として、多くの参拝者を集めています。

寺伝によると、白鳳14年（686年）に行基が諸国行脚の際に、大岡山山頂に自ら彫った千手観音を安置したのが始まりとされています。この時、龍王山観音院として創建されました。平安時代に入ると、東海道が甲賀郡を通るようになり、大岡山は交通の要所として発展。最盛期には16もの子院を擁する大寺院となり、「大岡寺」や「岡観音」とも呼ばれるようになりました。

歴史の中で、大岡寺は数々の出来事に関わっています。天仁2年（1109年）の源義忠暗殺事件では、犯人とされた源義綱が甲賀郡に逃れ、討伐軍との激戦の末、この寺で出家しました。また、元久元年（1204年）には、鴨長明も当寺で出家しています。中世には、水口神社を護法神とし、山王新宮とも呼ばれていました。

しかし、天正2年（1574年）の織田信長と六角義賢の合戦で、大岡寺は本坊の東之坊を残し、全てが焼失するという大きな被害を受けました。その後、羽柴秀吉の家臣である中村一氏が甲賀郡を領有した際、大岡山に城を築くために東之坊を移転させ、水口岡山城を築城。これにより、大岡山は古城山と呼ばれるようになりました。江戸時代になり、寛永11年（1634年）に水口城が築城されると、水口岡山城は廃城となりました。

転機が訪れたのは天和2年（1682年）。加藤明友が水口藩主となり、東之坊を祈願所とし、寺領の寄進を受けました。正徳5年（1715年）、住持の寂堂は藩の許可を得て、東之坊を現在の場所に移転し、龍王山大岡寺として再興。さらに、古城山山頂に、奥の院として阿迦之宮を建立しました。寛政7年（1795年）には、松尾芭蕉の句碑が建てられ、現在では水口八景の一つとして親しまれています。

大正8年（1919年）には、裏山に四国三十三観音霊場の石仏群が作られました。昭和41年（1966年）には、荒廃していた阿迦之宮を再建し、水口岡山城の城主であった長束正家も合わせて祀っています。

境内の構成

現在の大岡寺には、以下のような堂宇や施設があります。

本堂（観音堂）：千手観音を祀る。
行者堂：行者修行の場。
本地堂：仏像を安置。
庫裏：寺院の台所。
客殿：来客をもてなす場。
弁天堂：弁財天を祀る。
諏訪神社：境内の守護神。
鐘楼堂：鐘を吊るした建物。
山門：寺の入り口。
奥の院（阿迦之宮）：古城山山頂に位置。
四国三十三観音霊場石仏群：裏山一帯。

文化財

大岡寺には、以下の重要文化財があります。

木造千手観音立像：鎌倉時代の作。
木造阿弥陀如来立像：平安時代の作。

これらの仏像は、2001年以降所在不明となっていましたが、後に東京都品川区の安楽寺に安置されていることが判明。安楽寺との間で所有権を巡る訴訟が起こりましたが、2018年1月、大津地裁は大岡寺への返還を命じました。

また、かつて延暦寺の三門跡として知られた圓満院が競売にかけられた際、大岡寺が落札。これにより、圓満院の所有権も大岡寺に移転しています。

周辺の札所

大岡寺は、近江西国三十三箇所霊場と甲賀西国三十三所の札所となっています。

近江西国三十三箇所：25番 金剛定寺 - 26番 大岡寺 - 27番 千光寺
甲賀西国三十三所：21番 善水寺 - 22番 大岡寺 - 23番 千光寺

参考文献

滋賀県教育委員会・甲賀市教育委員会『水口岡山城跡』滋賀県教育委員会 2011年。

大岡寺は、歴史の荒波にもまれながらも、その信仰を守り続けてきた寺院です。美しい自然に囲まれた境内は、訪れる人々に安らぎを与えています。

関連情報

水口岡山城
加藤氏
* 総本山龍王山大岡寺（外部リンク）

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