大旺吉伸

大旺 吉伸

力士としての歩み

大旺 吉伸（だいおう よしのぶ、本名：荒谷 邦治）は、1949年6月23日、富山県新湊市八幡町（現在の射水市）に生まれました。二子山部屋に入門し、最高位は東前頭4枚目まで昇進した元大相撲力士です。

中学校卒業後、15歳で角界へ足を踏み入れた大旺は、1964年11月場所で初土俵を踏みました。翌1965年3月場所では「若神（わかじん）」の四股名で序ノ口に名を連ねます。その後、「大旺」や「威光（いつひかり）」への改名を経て、1972年3月場所からは再び「大旺」を名乗り、引退までこの四股名を通しました。

身長186cmと力士としては恵まれた体格でしたが、当時の体重は100kg前後とやや細身で、「そっぷ型」の典型と評されました。この体型から、相手にがっぷり組まれると苦戦することがありました。

順調に出世し、1972年5月場所で新十両に昇進。十両では4場所連続で勝ち越すなど安定した成績を残し、翌1973年1月場所、23歳で待望の新入幕を果たしました。

幕内では苦戦することも多かったものの、3度目の入幕となった1974年11月場所では10勝5敗と大きく勝ち越し、自己最高位更新の足がかりを掴みました。この活躍により、翌1975年1月場所では自己最高位となる東前頭4枚目まで番付を上げましたが、当時の横綱・大関陣からは白星を挙げられず、上位の壁に阻まれました。

1978年以降の約4年間は、幕内昇進がわずか1場所にとどまり、大半の場所を十両で過ごす時期が続きました。しかし、この間も休場することなく土俵に上がり続けました。

引退とその後

1981年11月場所を前に、32歳で土俵を去る決断をしました。特筆すべきは、序ノ口に名前が載った1965年3月場所から、事実上の最終場所となった1981年9月場所まで、実に1156番に及ぶ連続出場記録を樹立したことです。最終場所では東十両11枚目で8勝7敗と勝ち越しという成績を残しての引退でした。

引退の背景には、かねてより抱いていた料理店経営への夢を実現したいという自身の強い希望と、当時の師匠であった二子山親方からの勧奨があったとされています。「十分働けるうちに第二の人生を歩みたかった」と語る一方、「辞めさせられた」との証言も残っています。

現役引退後は、東京都板橋区にて相撲料理店「相撲茶屋 大旺」を経営し、第二の人生を歩んでいます。

エピソード

特に有名なエピソードとしては、1974年5月29日に同部屋の若獅子関（最高位：小結）と行った、大相撲界では前例のない「合同結婚式」が挙げられます。これは師匠から「何度も客を呼ぶのは面倒だから一度にしろ」と言われたためと言われており、両力士の夫人たちの理解も得ながら実現に至った苦労話が残っています。
関取として通算58場所を務めながら、引退相撲や断髪式を行わなかったことでも知られます。料理店を始めた当初は「一国一城の主になったらマゲを切る」という思いでしたが、次第に店の看板のような存在となり、自身で結い続ける状況が長らく続きました。しかし、相撲協会の停年年齢に当たる65歳の誕生日を迎える前に、ついに断髪したという情報があります。
人物評としては、同部屋だった若獅子関からは「やせの大食い」で「人はいいが頭が弱い」といったユニークな評価があった一方、稽古熱心で意志が強く酒にも強い一面も語られています。
当時の横綱・輪島関に風貌が似ており、サインを求められた際に間違えられた経験もあるそうです。
師匠の二子山親方よりも、部屋の先輩である貴ノ花関（後の大関）を深く慕っていたとも伝えられています。

主な成績

通算成績: 587勝569敗（勝率.508）
幕内成績: 57勝93敗（勝率.380）
現役在位: 101場所
幕内在位: 10場所
連続出場記録: 1156番（1965年3月場所 - 1981年9月場所）
各段優勝: 序二段優勝1回（1966年1月場所）

関連情報

大相撲力士一覧

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（参考文献: 『戦後新入幕力士物語 第3巻』 佐竹義惇著 ベースボール・マガジン社 1991年）

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