平時家

平時家：平家一門から源頼朝の側近へ

平時家（たいら の ときいえ）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて生きた貴族・武士です。桓武平氏高棟流の流れを汲み、権大納言・平時忠の次男として生まれました。最終的な官位は従四位下・右少将。平家一門でありながら、源頼朝に味方し、その側近として仕えたという特異な経歴の持ち主です。平家滅亡後は信時（のぶとき）と改名しています。

平家一門としての栄華と失脚

仁安3年（1168年）に六位蔵人に任ぜられた時家は、平家一門の隆盛とともに順調に出世を重ねました。安元2年（1176年）には右近衛権少将兼伯耆守に任じられ、翌年には従四位下に叙せられています。しかし、治承3年（1179年）11月、突如として上総国への流刑を宣告されます。

表向きの理由は、その年に起こった後白河法皇幽閉に関連した反平家派公家の処罰（「治承三年の政変」）によるものでした。しかし、時家の流刑は、処分がほぼ終わった段階でのものであり、平清盛の妻の甥である時家がそのような行動に関与する理由も見当たりませんでした。真相は、時家の継母である時忠の後室・藤原領子が、時家と折り合いが悪かったことから、この機に乗じて夫に讒言したことでした。父・時忠や清盛もこれを信じ、時家は都を追われることになったのです。

上総での出会いと源氏への鞍替え

上総国に流された時家は、地元の有力武士である上総広常に気に入られ、その婿となりました。その後、源頼朝が挙兵すると、上総国は頼朝軍に制圧され、広常もこれに従います。広常の勧めもあり、時家は寿永元年（1182年）に鎌倉へ出仕し、頼朝に仕えることになりました。平家一門でありながら、蹴鞠や管弦、礼儀に通じていた時家は、頼朝に重用されます。また、時家自身も、かつての事件から平家一門に恨みを抱いていたため、本来であれば敵である頼朝に忠誠を誓ったのです。

鎌倉幕府での活躍と晩年

後に義父・上総広常は粛清され、平家も滅亡しますが、頼朝からの時家への信頼は揺らぐことはありませんでした。頼朝の家臣団では最高位の位階を持つ人物として、内外からの尊敬を集め、鎌倉幕府初期の政治顧問の一人として活躍しました。その後、鎌倉で穏やかな晩年を過ごしたと伝えられています。

官歴

仁安3年（1168年）：六位蔵人
嘉応元年（1169年）：美作守
安元2年（1176年）：右近衛権少将兼伯耆守
安元3年（1177年）：従四位下

系譜

父：平時忠
母：不詳
妻：上総広常娘
生母不明の子女
* 女子：竹御所女官、のち大江親広室


平時家は、時代の荒波に翻弄されながらも、自身の才覚と人脈を活かして新たな道を切り開いた人物と言えるでしょう。

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