大河平氏

大河平氏（おこびらし）とは

大河平氏は、日向国に興った氏族で、肥後国の名族・菊池氏の庶流にあたります。元々は八代氏と称していましたが、戦国時代の動乱の中、日向国の大名・北原氏に仕えることとなり、大河平の地名を冠するようになりました。その後、島津氏の傘下に入り、薩摩藩士としてその血脈を繋ぎました。

菊池氏からの流れ

大河平氏の祖は、菊池氏6代当主・菊池隆直の三男・菊池五郎隆俊です。隆俊は八代に移り住み、八代隆俊と名乗りました。当初は菊池宗家に忠実に従っていました。しかし、菊池宗家が八代氏12代当主・隆屋の時代に大友氏との戦いに敗れ、一族は米良山中に逃れることとなります。この時、一部は米良に留まり米良氏を称し、また、須木に移住する者もいましたが、隆屋は部下66家を率いて北原氏を頼り、真幸院・飯野（現在の宮崎県えびの市）の大河平郷に移り住みました。この移住を機に、姓を大河平に改めたとされています。本貫地は終生変わらず、大河平のままでした。

戦国時代の動乱

永禄2年（1559年）、北原家中で内紛が起こると、隆屋は島津氏を頼り、島津義弘に謁見します。義弘は隆屋に大河平の旧領をそのまま与えました。永禄5年（1562年）、隆屋が病没すると、その隙を突いて伊東義祐が450人の兵で大河平城を攻めましたが、後を継いだ嫡孫・隆利（隆屋の嫡男・隆充の嫡子）がこれを守り抜きます。義弘はこの功績を称え、隆利に鍋・灰塚・榎田の地、計2,000石を与えました。

その後、隆利は大河平城の西に今城を築き、自前の兵と島津からの派遣兵300人と共に入城します。しかし、永禄6年（1563年）1月、隆利も病没。後を隆利の弟・隆次が継ぎますが、飯野城に住む主君・北原兼親との関係が悪化します。兼親は義弘に対し、「飯野城と今城は近く、すぐに救援できるため、今城の守兵は撤収した方がよい」と進言し、今城の派遣兵は撤収してしまいます。この情報を掴んだ伊東義祐は、永禄7年（1564年）5月に今城を攻撃します。隆次は叔父の大河平隆堅や、同じ菊池氏庶流の八重尾氏などと共に奮戦しますが、城兵130余人は全員討ち死にしてしまいます。

今城落城後、飯野城には島津義弘が入ります。しかし、永禄11年（1568年）に伊東氏が相良氏と共に、菱刈氏の大口城攻略中で義弘が不在の飯野城を攻略しようと計画していることが発覚します。この情報を義弘に伝えたのが、球磨皆越の地頭・皆越六郎左衛門の妻であり、彼女は隆次の姉・ナミでした。この功績により、六郎左衛門は妻の旧姓である大河平氏を継ぎ、大河平隆俊と改名して、大河平氏の旧領を与えられました。なお、今城落城時に6歳だった隆堅の子・隆重は家臣に救出され、隆俊の養子となって大河平家を継ぎました（ただし、『本藩人物誌』では隆堅の孫・隆商が養子となったとされており、後述の系図もそれに準拠します）。

西南戦争と大河平事件

明治10年（1877年）に勃発した西南戦争において、大河平の士族は西郷隆盛率いる薩軍に参加しました。14代当主・隆芳の嫡子・鷹丸もその一人でしたが、戦傷を負い帰郷。大河平の別邸（本邸は鹿児島）で妻子と共に療養していました。小林に本営を置いていた薩軍から、官軍が大河平に侵入した場合の戦況悪化を懸念し、大河平の村々を焼き払うよう鷹丸に指示が出されます。鷹丸は指示に従い、5月4日の夜半に60余村を焼失させました。

しかし、飯野越えを守備していた大河平臣下の川野通貫・清藤泰助らは、この事実を知りませんでした。6月13日の敗戦後、大河平に帰還した彼らは、焼失した村々に愕然とし、鷹丸らを襲撃。鷹丸らは鍋倉の親戚の家へ逃れました。二日後、鷹丸の元へ妻子が訪れると、川野らは鷹丸とその妻子、そして従者のほぼ全てを刺殺しました（ただし、鷹丸の次女と三女、従者のセツの3名は逃れることに成功）。

この報せを受けた鹿児島の本邸にいた隆芳は、鷹丸の仇討ちと称し、また、川野らが6月17日に官軍に投降したことから、薩軍は、大河平士族の官軍への内通を疑い、大河平士族の拿捕を敢行しました。士族の妻子も捕縛され、宮崎に送られた後、処刑されました。西南戦争終結後、隆芳は鷹丸を殺害した者たちを告訴。逃亡していた川野を除く全員が逮捕されましたが、清藤は収監中に脱獄しました。明治12年（1879年）、首謀者2人を欠いたまま下された判決は懲役1年というもので、隆芳はこれを不服として上告。私財を投じて川野と清藤の捜索を行いました。川野は高鍋の山中に潜伏していたところを発見され、逮捕されました。そして、明治14年（1881年）、川野は3度の裁判の末、死刑を宣告されました。

系図

（系図はテキストでの表現が難しい為、割愛します。ご了承ください。）

関連項目

真幸院
菊池氏
北原氏
島津氏
西南戦争
フランス山事件

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