大淫婦バビロン

大淫婦バビロン：黙示録における堕落の象徴

「大淫婦バビロン」は、キリスト教の聖典『ヨハネの黙示録』に登場する、象徴的な人物です。彼女は、堕落と破滅の象徴として描かれ、その解釈は多岐にわたります。

概要

黙示録によれば、大淫婦バビロンは「悪魔の住むところ」「汚れた霊の巣窟」とされ、女という隠語で表現されています。彼女はきらびやかな装身具を身につけ、金杯を手にしていますが、その杯は姦淫によって汚されているとされます。また、彼女は殉教者の血を流しますが、最終的には神の裁きによって滅ぼされると預言されています。

旧約聖書引用説

大淫婦バビロンの描写は、旧約聖書に登場する遊女や、バビロン捕囚に関連する記述からの影響を受けているとする説があります。特に、都市を遊女に例える表現（イザヤ書1:21）が、黙示録の描写に影響を与えたと考えられています。

過去説

この説では、大淫婦バビロンは過去の出来事を象徴していると解釈します。彼女は堕落した女の隠喩であり、その正体は古代ローマ帝国であるとされます。彼女が乗る7つの首を持つ獣は、ローマ帝国の7つの丘、あるいは7人の皇帝を表しているとされます。特に、キリスト教徒への迫害が激しかった時代、カリグラやネロのような暴君がいた時代を指しているとされます。ネロ帝によるローマ大火後のキリスト教徒迫害や、初代ローマ教皇ペトロの殉教が、この象徴的な描写の背景にあると考えられています。

現在進行説

大淫婦バビロンを現代の預言として解釈する立場もあります。宗教改革者たちは、大淫婦バビロンをローマ・カトリック教会、教皇を反キリストであるとしました。彼らは、教会の組織や祭祀が発展する中で、古代バビロニアの偶像崇拝的な慣習が取り込まれ、教会自身が破滅へと向かう堕落した存在になったと主張しました。

未来説

大淫婦バビロンを未来に関する預言と解釈する説もあります。ディスペンセーション主義者の高木慶太は、ローマ・カトリック、リベラル・プロテスタント、そして世の偶像崇拝的な教派が混ざり合ったエキュメニズム（キリスト教の教会一致運動）を大淫婦とみなしました。

新宗教における用法

エホバの証人によれば、大淫婦バビロンは古代バビロンに由来する宗教的慣習を持つ世界的な宗教体制全体を指します。彼らは、三位一体の神の崇拝、人間の魂は死後も生き続けるという教え、心霊術、偶像崇拝、呪文の使用、不道徳行為の容認、国政への関与、僧職者階級などをその主な慣習として指摘します。彼らは、キリスト教世界がその中心であり、偽りとみなす宗教を「母なる大いなるバビロンの娘」と解釈します。また、大淫婦バビロンは、近い将来に「緋色の野獣」が象徴する国際連合機構と、「十本の角」を持つ野獣が象徴する諸政府によって滅ぼされると解釈しています。

その他の解釈

アレイスター・クロウリーは、トート・タロットにおいて、一般的なタロットカードの「力」に相当するカードに、この大淫婦バビロンのモチーフを取り入れ、「欲望」と名付けました。

まとめ

大淫婦バビロンは、黙示録における重要な象徴であり、その解釈は時代や宗派によって大きく異なります。彼女は、過去の歴史的出来事、現代の宗教的状況、そして未来の預言まで、幅広い文脈で解釈されています。この多面的な解釈こそが、大淫婦バビロンの持つ象徴的な力を示していると言えるでしょう。

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