大谷篤蔵

大谷篤蔵：近世文学、特に俳諧研究の第一人者

大谷篤蔵（1912年3月22日-1996年8月4日）は、日本の国文学者として知られています。大阪市に生まれ、京都帝国大学文学部国文科を卒業後、大学院では近世文学、特に俳諧を専攻しました。師事したのは、著名な国文学者である潁原退蔵です。

大学卒業後は、軍隊への出征、そして抑留という経験を経て、1948年7月に復員。その後、天理図書館司書研究員などを経て、1953年には佐賀大学助教授、1958年には大阪女子大学教授に就任します。1975年に大阪女子大学を定年退官後も、名誉教授として、松蔭女子学院大学教授を務め、1989年に退任、名誉教授となりました。

学術活動においては、俳文学会代表を務めるなど、長年にわたって俳諧研究の中心人物として活躍しました。その研究は、近世文学、特に俳諧の分野に多大な貢献を残しています。

幅広い研究活動と主要業績

大谷篤蔵の研究活動は多岐に渡り、著作、校注・編纂、論文発表など、実に多くの成果を残しました。主な著書としては、『俳林間歩』（岩波書店、1987年）、『芭蕉連句私解』（角川書店、1994年）、『芭蕉晩年の孤愁』（角川学芸出版、2009年）などがあります。これらの著作は、近世俳諧の研究において重要な文献として高く評価されています。

さらに、多くの古典籍の校注・編纂にも携わっています。代表的なものとしては、『日本古典文学大系45 芭蕉句集』（岩波書店、1962年）、『校本芭蕉全集』（角川書店、1963年）、『古典俳文学大系12 蕪村集』（集英社、1972年）などがあります。これらの校注・編纂作業においては、正確性と精密さを追求し、後世の研究者にも大きな影響を与えました。

また、『近世大阪芸文叢談』（大阪芸文会、1973年）、『慶長・寛永漢和聯句』（大阪俳文学研究会、1975年）、『武陵来簡集』（西尾精一、1976年）、『謡曲二百五十番集』（赤尾照文堂、1978年）、『随筆百花苑 第13巻 地誌篇 一』（中央公論社、1979年）、『須磨寺御開帳古俳書集』（ジュンク堂書店、1984年）、『島原角屋俳諧資料』（角屋、1986年）、『校本芭蕉全集 別巻 補遺篇』（富士見書房、1991年）、『蕪村書簡集』（岩波文庫、1992年）など、多様なテーマの編纂にも携わっており、その活動範囲の広さがうかがえます。これらの編纂物は、貴重な資料を提供し、近世文学研究に多大な貢献をしています。

CiNiiなどのデータベースには、大谷篤蔵の論文が多数掲載されており、彼の研究の深遠さを物語っています。これらの論文は、近世文学、特に俳諧研究において、重要な知見を提供するものです。

まとめ

大谷篤蔵は、戦後の混乱期から高度経済成長期を経て、晩年まで第一線で活躍した稀有な国文学者でした。彼の研究は、近世文学、とりわけ俳諧研究に大きな足跡を残し、後世の研究者たちに多大な影響を与え続けています。膨大な著作、校注・編纂物、論文は、日本の古典文学研究における重要な遺産であり、これからも多くの研究者によって読み継がれていくでしょう。彼の功績は、日本の国文学の発展に大きく貢献したといえます。

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