須磨寺

須磨寺：歴史と文化が織りなす古刹

古都神戸の地に佇む須磨寺は、真言宗須磨寺派の大本山として、悠久の歴史と豊かな文化を今に伝えています。正式名称は福祥寺、山号は上野山。本尊は聖観音菩薩で、新西国三十三箇所第24番札所にも数えられています。

伝説と歴史の重層

寺の創建は平安時代初期に遡ると伝えられています。漁師が海中から聖観音像を拾い上げたことがきっかけとなり、淳和天皇の勅命によって恵偈山北峰寺が建立されました。その後、光孝天皇の勅命により、聞鏡上人が上野山福祥寺を建立し、北峰寺から聖観音像を遷しました。しかし、『当山歴代』には、本尊の安置が源頼政による嘉応元年（1169年）とする説も残されています。

豊臣秀頼は慶長7年（1602年）、片桐且元を奉行として本堂を再建しました。その本堂内陣の宮殿は、応安元年（1368年）の建造とされ、貴重な文化財として現在も大切にされています。

1995年の阪神・淡路大震災では甚大な被害を受けましたが、その後復興を果たし、人々の信仰を集め続けています。

源平ゆかりの史跡と数々の文化財

須磨寺は、源平合戦にゆかりのある寺としても有名です。平敦盛にまつわる伝説が多く残り、「青葉の笛」や敦盛首塚、義経腰掛の松などの史跡は、歴史ファンや文学愛好家にとって大きな魅力となっています。境内には正岡子規や松尾芭蕉の句碑、尾崎放哉の墓もあり、文人墨客とも深い関わりを持っていたことが伺えます。

境内：歴史と信仰の空間

広大な境内には、本堂をはじめ、護摩堂、十三重石塔（兵庫県指定有形文化財）、大師堂、敦盛公首洗池、八角堂、出世稲荷社、鐘楼（弁慶の鐘の複製）、宝物館、唐門、三重塔、四国八十八箇所石仏群、親子地蔵堂、敦盛首塚、青葉殿、奥の院、書院、本坊、源平の庭など、数多くの建造物や史跡が点在しています。

塔頭寺院としては、桜寿院（本尊：阿弥陀如来）、蓮生院（本尊：不動明王）、貞照寺（本尊：弘法大師）、正覚院（本尊：愛染明王、西国愛染十七霊場第6番霊場）があり、それぞれ独自の信仰を集めています。また、2016年には東南アジアやインドの石仏を安置した亜細亜万神殿が建立されました。

貴重な文化財

須磨寺には、多くの貴重な文化財が保存されています。重要文化財には、本堂内宮殿及仏壇、木造十一面観音立像、絹本著色普賢十羅刹女像などが含まれ、いずれも南北朝時代の優れた作品です。

兵庫県指定有形文化財には、十三重石塔、木造不動明王立像（応安2年、東寺大仏師康俊作）、鰐口、当山歴代古記録などがあり、神戸市指定有形文化財にも、木造聖観音坐像、紙本著色平敦盛画像、絹本著色天台四祖像などが指定されています。その他にも、仁王像、釣灯籠、銅鐘、平敦盛像（熊谷蓮生坊作、狩野安信筆、狩野久蔵筆）、青葉の笛など、数多くの美術工芸品が伝えられています。

多様な霊場との関わり

須磨寺は、新西国三十三箇所、真言宗十八本山、摂津国八十八箇所、摂津国三十三箇所、西国愛染十七霊場、福原西国三十三観音霊場、神戸十三仏霊場、神戸七福神、役行者霊蹟札所、神仏霊場巡拝の道など、多くの霊場と関わっており、古くから信仰を集めてきたことを示しています。

アクセスと周辺情報

須磨寺へは、山陽電車須磨寺駅より徒歩5分、JR神戸線須磨駅より徒歩12分とアクセスも良好です。周辺には、平重衡とらわれの遺跡、須磨霊泉、現光寺（源氏寺）、関守稲荷神社、松風村雨堂、須磨離宮公園など、見どころが多くあります。

近年では、夏の高校野球選手権大会の代表チームの宿泊所としても知られており、歴史と現代が交差する、魅力あふれる寺院です。

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