大須賀胤信

大須賀胤信：平安末期から鎌倉前期を駆け抜けた武将

大須賀胤信（おおすが たねのぶ）は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて活躍した武将です。房総平氏の宗家である桓武平氏良文流千葉氏の一族、大須賀氏の初代惣領として、その名を歴史に刻みました。

生涯

胤信は、下総国の有力在庁官人であった千葉介常胤の四男として生まれました。当時の下総国は、現在の千葉県北西部から茨城県南部にかけての一帯を指します。父・常胤は、下総権介という役職にも就いており、この地域における影響力は非常に大きいものがありました。

平安時代末期、胤信は、大須賀保（現在の成田国際空港周辺から九十九里浜一帯）を領地としていました。しかし、この地は元々、上総広常の所領でしたが、広常が源頼朝への謀反を疑われたことで誅殺され、その後、頼朝の信頼が厚かった胤信に与えられたのです。胤信は、この地を与えられたことで、自らを「大須賀胤信」と名乗るようになりました。

治承4年（1180年）、源頼朝が伊豆国で挙兵すると、胤信は父や兄弟と共に頼朝に味方しました。石橋山の戦いで敗れた頼朝が安房国へ逃れると、父・常胤は頼朝の要請に応じ、胤信もまた、千葉一族を率いて下総国府に参陣しました。この時、胤信は300騎の兵を率いており、頼朝の信頼は非常に厚いものだったと言えるでしょう。

その後、胤信は源氏軍の与力として、数々の戦で活躍しました。特に、富士川の戦いの後、上洛を急ぐ頼朝を、父・常胤と共に諫めたという逸話は有名です。また、佐竹氏討伐を進言し、相馬御厨の支配を奪還するなど、軍事面においても大きな貢献をしました。

元暦元年（1184年）には、源範頼軍に属して一ノ谷の戦いに参加し、その後は豊後国に渡り軍功を上げました。文治3年（1187年）には、洛中警護のために上洛し、文治5年（1190年）の奥州合戦では東海道方面の大将に任じられ、その功績により、頼朝から陸奥国好島庄（現在の福島県いわき市）を賜りました。

胤信は、領民への配慮も忘れず、正治2年（1200年）には、賜った好島庄を東西に分割し、「好島東庄」を嫡子・通信に、「好島西庄」を四男の胤村に与えました。これにより、領地を兄弟で公平に分け与えるという、平等な統治を実践したのです。

建暦3年（1213年）には、鎌倉幕府内で起こった和田合戦において、北条義時の命により、三浦氏、足利氏と共に反乱軍の鎮圧に兵を挙げました。この戦での功績が評価され、胤信は鎌倉幕府から甲斐国井上庄を賜りました。

大須賀胤信は、武将としての才能はもちろんのこと、その誠実さ、公正さから、多くの人々に慕われた人物でした。源頼朝の信頼も厚く、その後の鎌倉幕府の確立にも大きく貢献した、重要な人物の一人と言えるでしょう。

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