天保大判

天保大判は、天保9年6月24日（1838年）に発行が開始された大判です。これは、従来の吹替えによるものではなく、享保大判とほぼ同じ形式で、金品位も近いものとして作られました。そのため、吹増大判、あるいは吹継大判とも呼ばれることがあります。

天保8年（1837年）から鋳造されていた五両判は、もともと大判座の後藤四郎兵衛家十五代真乗の発案によるものでしたが、通貨であるという理由から金座が鋳造を担当することになりました。これにより、大判座は財政難に苦しむこととなり、その救済策として天保大判の鋳造が開始されたという背景があります。

概要

天保大判の表面には、「拾両後藤（花押）」と墨書されています。これは、後藤四郎兵衛家十六代の方乗、十七代の典乗による書です。上下左右には丸枠桐極印がそれぞれ一箇所ずつ、計四箇所打たれており、形状はやや角ばった楕円形をしています。表面の鏨目（たがねめ）がやや太く、熨斗目（のしめ）に近い点、また、極印の形状が異なる点などから、享保大判と区別することができます。

裏面の中央には丸枠桐紋、亀甲桐紋、花押の極印に加え、左下には座人極印が打たれています。裏面の極印による鋳造高は、天保9年6月21日から8月28日までは「方・次・丘」2枚（見本金）、「伊・三・丘」243枚、「伊・文・丘」224枚、「伊・次・丘」154枚が鋳造され、そのうち7枚が潰金となりました。同年9月26日から12月2日までは156枚（極印不詳）が鋳造され、天保11年12月23日から12年4月21日までは「い・宇・川」および「は・宇・川」の計1,115枚が鋳造されています。

当時の貨幣相場において、元文小判に対して含有金量に基づけば11両3分であった大判が、10両という相場で流通していました。そのため、商人による大判の退蔵が行われ、市場では大判の調達が困難な状況となっていました。その後、文政小判に対して20両、天保小判に対して32両まで高騰していた大判相場が、天保大判の発行により下落し、20両2分で落ち着きました。

天保大判の通用期間は、天保9年6月24日から万延元年4月10日（1860年）までであり、この期間中、享保大判と並行して流通しました。

参考文献

* 天保大判 - 東京国立博物館画像検索

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