天国に結ぶ恋

『天国に結ぶ恋』について

『天国に結ぶ恋』（てんごくにむすぶこい）は、1932年6月10日に公開された日本の映画で、五所平之助が監督を務めました。この作品は、坂田山心中事件を題材にし、当時の世間を賑わせた話題を取り上げています。同名の主題歌を徳山璉と四家文子が歌い、映画と共に大きな反響を呼びました。

制作背景

公開は心中事件から約1ヵ月後というタイミングでした。監督の五所は元々『伊豆の踊り子』の制作を考えていたところ、偶然この事件を知りました。彼は旅行中に会社からの緊急連絡を受け、撮影を急遽行うことに決めました。撮影は約13日間で終了し、ロケ隊は主演の竹内良一と川崎弘子を引き連れて大磯へ向かい、事件現場でのスチール写真撮影を行ったことが伝えられています。五所は、「映画としては大変キワモノであったため、本当はやりたくなかったが、会社から仕事を仰せつかったため引き受けた」と、その時の心境を振り返っています。

ストーリー

本作は、心中事件をテーマにしながらも、事件の悲劇的な側面には触れず、ロマンチックなメロドラマに仕立て上げられています。公開当初、この映画は話題となり、3週にわたって上映が続けられる大ヒットを記録しました。興行形態は、トーキーへの過渡期において流行していたサウンド版という形式で、伴奏や主題歌が効果的に使われ、多くの女性が感動し涙を流したとされています。

社会的影響

しかし、映画の公開後には暗い影響が出始めました。映画を見た一部の人々が映画館内で自殺を図るなどの事件が起こり、後追い心中の増加が懸念される事態に発展しました。これにより、監督の五所は「困ったことになった」と頭を抱え、多くの投書が寄せられました。その内容は映画による悪影響を非難するものであり、地域によっては上映禁止に至った県もありました。

一方で、五所は本作のヒットを予感しており、つぶれかけた映画館が再起したとの声も聞かれていました。そして、五所自身は次回作『恋の花咲く 伊豆の踊子』を良い条件で撮影できる機会に恵まれたと報告されています。

キャスト

映画には多くの名優が出演しており、主なキャストには以下のような人物が含まれています。

• - 竹内良一（津田一郎）
• - 藤野秀夫（父・定弘）
• - 光川京子（一郎の妹・光子）
• - 川崎弘子（藤山綾子）
• - 武田春郎（父・平助）
• - 葛城文子（母・志満子）
• - 山内光（兄・耕作）
• - 若水絹子（妻・さえ子）
• - 泉博子（綾子の友達・義子）

スタッフ

• - 監督：五所平之助
• - 脚色：伏見晁
• - 撮影：小原譲治

主題歌

主題歌『天国に結ぶ恋』は、徳山璉と四家文子が歌い、作詞は柳水巴（西條八十）、作曲は林純平（松平信博）によるもので、ビクターレコードから発売されています。

結論

『天国に結ぶ恋』はその背景やキャスト、当時の社会状況ともに、映像作品として重要な位置を占める作品です。心中事件という切実なテーマを取り上げたその姿勢は、現代の視点からも多くの問題を考えさせてくれます。

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