天太玉命神社

天太玉命神社：古代氏族・忌部氏の氏神を祀る歴史深い神社

奈良県橿原市忌部町に鎮座する天太玉命神社は、古くから続く歴史を有する神社です。式内社（名神大社）に指定されており、古代氏族である忌部氏の氏神として広く知られています。その歴史や祭神、境内社など、詳細に見ていきましょう。

祭神

天太玉命神社には、以下の4柱の神々が祀られています。

天太玉命（あめふとたまのみこと） - 主祭神。忌部氏の祖神とされる。
大宮売命（おおみやのめのみこと）
豊石窓命（とよいわまどのみこと）
櫛石窓命（くしいわまどのみこと）

『延喜式神名帳』には「太玉命神社四座」と記載され、4座が名神大社に列せられています。ただし、具体的な祭神については複数の説があり、『五郡神社記』や松下見林の『太玉命社記』など、異なる解釈も存在します。現在、一般的に受け入れられているのは、天太玉命、大宮売命、豊石窓命、櫛石窓命の4柱です。大宮売命、豊石窓命、櫛石窓命の3柱は、『古語拾遺』や『先代旧事本紀』において、天太玉命の御子神とされています。

天太玉命と忌部氏

主祭神である天太玉命は、忌部氏の祖神として信仰されています。忌部氏は、古代において宮中祭祀を司る重要な氏族でした。『古事記』や『日本書紀』には、天照大神の岩戸隠れの神事や、瓊瓊杵命（邇邇芸命）の天孫降臨の際に天太玉命が重要な役割を果たしたことが記されています。天太玉命神社の鎮座地である忌部町は、忌部氏の本拠地であったと推測されており、神社と氏族の深い結びつきを示しています。

歴史

神社の創建時期は不明ですが、忌部氏の氏神として祀られたと考えられています。

天安3年（859年）：『日本三代実録』に「太玉命神」の神階が従五位上に昇叙された記録が残っています。
貞観10年（868年）：『類聚三代格』の太政官符において、「天太玉神」の社が飛鳥神の四裔神の1つに挙げられています。
延長5年（927年）：『延喜式神名帳』に「太玉命神社四座」として記載され、名神大社に列し、朝廷の祭祀にも関与していたことが分かります。
室町時代：『興福寺官務牒疏』に高市郡忌部に鎮座する「太玉神」の記載があり、興福寺の末社であったことが分かります。
江戸時代：「春日社」と呼ばれていましたが、元禄10年（1697年）に松下見林が『延喜式神名帳』の「太玉命神社」に比定しました。
明治41年（1908年）：近代社格制度において村社に列格しました。

このように、天太玉命神社は長い歴史の中で、朝廷や地方社会において重要な役割を果たしてきた神社であることが分かります。

境内摂末社

天太玉命神社境内には、以下の摂末社も存在します。

玉依姫命神社: 祭神は玉依姫命。
春日神社: 祭神は天児屋根命。

アクセス

所在地: 奈良県橿原市忌部町字一ノ道153
交通: 西日本旅客鉄道（JR西日本）桜井線（万葉まほろば線）金橋駅から徒歩約13分

参考文献

境内説明板、事典類、専門論文など様々な資料が天太玉命神社の歴史解明に役立っています。

まとめ

天太玉命神社は、古代氏族・忌部氏ゆかりの式内社であり、その歴史と祭神は日本の古代史を研究する上で重要な要素となっています。静かな社殿と歴史を感じさせる境内は、訪れる人々に深い感動を与えてくれるでしょう。

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