天川の水

天川の水：隠岐諸島の霊水

島根県隠岐郡海士町の中ノ島に位置する天川の水は、澄み切った水が絶え間なく湧き続ける、隠岐諸島を代表する湧水です。年間を通して枯渇することなく、1日あたり400トンもの地下水が湧出するその豊かな水量は、地元住民だけでなく、多くの観光客を魅了しています。

1985年には名水百選にも選定され、その水質の高さ、そして歴史的な背景から、島根県を代表する名水のひとつとして広く知られています。大山隠岐国立公園の区域内に指定されており、自然豊かな環境の中で、静かに湧き続けるその姿は、まさに隠岐の自然の恵みと言えるでしょう。

地理的・地質学的背景

天川の水の湧出は、隠岐諸島の地質学的特徴と密接に関連しています。中ノ島は、約630万年前から530万年前のカルデラ地形と推定されており、その中心には標高451.7メートルの焼火山がそびえ立っています。この火山活動によって形成された多孔質の凝灰岩や火山岩が、地下水を蓄え、天川の水として地表に湧出していると考えられています。浸透した雨水などが帯水層を形成し、安定した湧水量を保っているのでしょう。ただし、帯水層の詳細な調査は行われていないため、さらなる研究が待たれます。

歴史と伝説

天川の水には、古くからの伝説が息づいています。奈良時代に、高僧である行基がこの地を訪れ、湧き水の霊気に感銘を受けたと伝えられています。行基は、この水を「天川（天恵の水）」と名付け、聖観世音菩薩を祀る清水寺を開山したと言われています。この伝説は、天川の水が古くから聖域として大切に扱われてきたことを示しています。地元住民は代々この湧水を守り続け、現在もその清らかさを保っています。清水寺の境内には、今もなお、霊水として信仰の対象となっています。

アクセス

天川の水を訪れるには、海士町菱浦港から車で約15分です。豊かな自然に囲まれた場所に位置し、静寂の中で湧き続ける天川の水を体感できるでしょう。周囲の景観と相まって、訪れる人の心を癒す、貴重な空間となっています。

まとめ

天川の水は、豊かな自然、歴史、そして信仰が織りなす、隠岐諸島を代表する名水です。その清らかで豊富な水は、地元住民の生活を支え、人々の心を癒やし続けています。名水百選に選ばれたその価値は、今後も大切に受け継がれていくことでしょう。隠岐諸島を訪れた際には、ぜひ、この霊水に触れてみてください。

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