奄美群島選挙区

奄美群島選挙区について

奄美群島選挙区は、日本の衆議院議員総選挙における特殊な選挙区で、1953年から1992年まで存在していました。この選挙区は、中選挙区制の下で、唯一の1人区として特異な位置を占めていました。1953年12月25日に奄美群島が日本本土に復帰した際に、「奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律」に基づいて設置されました。定数は1名であり、この特徴から激しい選挙戦が展開され、特に投票率が非常に高い傾向がありました。特に1980年代から1990年代には、「保徳戦争」と呼ばれる激しい競争が起こり、投票率は90%以上になることもありました。

選挙区の区域

1992年の公職選挙法改正によって、名瀬市と大島郡は「当分の間鹿児島県第1区に属する」と定められ、この改正をもって奄美群島選挙区は消滅しました。それ以前の1975年における選挙区の範囲は名瀬市と大島郡でした。また、1964年の改正では名瀬市と大島郡の一部が含まれていました。これは、戦争の影響を受けた後の特異な政治状況を反映しています。

歴史的背景と選挙戦

第二次世界大戦の終結後、奄美群島はアメリカ合衆国の軍政下に置かれ、その後、1953年に日本に復帰しました。復帰にあたって、住民は「島ぐるみ闘争」として日本復帰運動を推進し、結果的に日本政府の統治権が復活しました。この時期、奄美群島は臨時北部南西諸島政庁や奄美群島政府を経て、1952年には琉球政府の統治下にいました。

選挙戦では、特に保守系候補者同士が激烈な争いを繰り広げました。保岡武久やその子である保岡興治がこの地域の代表的な候補者で、彼らの選挙戦は常に高い関心を集めました。しかし、伊東隆治や豊永光などの対抗候補もおり、選挙はいつも緊迫した状況が続いていました。

1983年に出馬した徳田虎雄は、過去の実績を踏まえて保岡との対決に臨んだことで、選挙情勢は一変します。この「保徳戦争」とも称される選挙戦では、中傷や買収などの問題が露呈し、選挙戦が非常に過酷なものとなりました。特にこの時期、選挙結果を予想した賭博が横行するなど、地域社会に大きな影響を与えました。

左派の候補はこの激戦に埋没し、奄美群島で選挙に参加することができず、1960年代以降は特に社会党や共産党的な候補者は当選できないという状況が続きました。このような状況は、奄美群島の選挙区が持つ特異性を強調しています。

選挙区の終焉

1992年の公職選挙法改正によって、奄美群島選挙区は定数1を持つことが困難となり、選挙区自体が廃止されました。この際、奄美群島は鹿児島県第1区と統合され、過去の激しい政治闘争もそのまま引き継がれることとなりました。こうした背景を考えると、奄美群島選挙区の歴史は日本の政治史においても特異な一次元を持つことが分かります。

このように、奄美群島選挙区は日本の政治の中で特異の存在であり、激しい選挙戦と高い投票率が形成されていました。その歴史は、地方政治の在り方や選挙制度の変遷についての重要な教訓を示しています。

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