奨忠体育館

奨忠体育館（장충체육관）

ソウル特別市中区に位置する奨忠体育館は、韓国を代表する歴史ある屋内体育施設です。この地はもともと韓国陸軍が運動場として使用していた場所で、1963年に金正秀の設計、ベクテル社の施工により完成しました。以来、長きにわたりソウル市によって管理されていましたが、2007年以降は運営主体が民間会社へと移っています。

格闘技の聖地としての歴史

奨忠体育館は、特に格闘技の世界で重要な役割を果たしてきました。かつて大韓民国におけるボクシング興行の中心地として知られ、数々の世界タイトルマッチがこの会場で開催され、多くのボクサーたちが熱戦を繰り広げました。プロレスの試合会場としても頻繁に利用され、1968年には韓国出身の大スターである大木金太郎（金一）が、バディ・オースチンを破りアジアヘビー級王座を獲得した記念すべき舞台となりました。また、1975年には日本の新日本プロレスが韓国遠征を行った際にも会場となり、大木が保持していたインターナショナル・ヘビー級王座にアントニオ猪木が挑戦するという、日韓両国のプロレスファンにとって記憶に残る一戦が組まれたことでも知られています。

政治とスポーツの舞台

スポーツイベント以外にも、奨忠体育館はその歴史の中で重要な政治的な役割も担ってきました。特に維新体制下では、統一主体国民会議の議場として使用されたほか、朴正熙、崔圭夏、全斗煥といった大統領の就任式がここで行われるなど、韓国現代政治の節目を見つめてきた場所でもあります。国際的なスポーツイベントとしては、1988年に開催されたソウルオリンピックにおいて、柔道とテコンドーの競技会場として使用されました。

国際交流の舞台

2004年2月には、日韓共同未来プロジェクトの一環として、大相撲韓国公演が開催されました。これは、韓国出身として初めて関取となった春日王克昌の活躍を受けて企画されたものです。当初は2003年6月にソウル市松坡区の蚕室体育館で開催される予定でしたが、中国などで流行したSARSによる渡航自粛などの影響で延期となり、会場も奨忠体育館に変更されて実現に至りました。一部には、興行上の理由による延期であったという見方もあります。

近年の改修と多目的利用

建設から長い年月を経て老朽化が進んだため、奨忠体育館は2012年9月から大規模なリニューアル工事が実施されました。約2年以上にわたる工事を経て、2015年1月に複合文化スポーツ施設としてリニューアルオープンしました。現在では、スポーツイベントはもちろんのこと、様々な文化行事やコンサートなど、多目的な用途で利用され、ソウル市民にとって身近な存在であり続けています。

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