妙円寺 (日置市)

妙円寺（みょうえんじ）

鹿児島県日置市伊集院町徳重に位置する妙円寺は、法智山を山号とする曹洞宗の寺院です。この寺は、戦国時代の武将、島津義弘の菩提寺として、その名を知られています。

歴史

妙円寺は、1390年、伊集院忠国の十一男である石屋真梁によって創建されました。当初は、大内義弘の娘の供養のために建てられたとされています。石屋真梁は、福昌寺の開山としても知られ、鹿児島名物「しんこ団子」の考案者という説もあります。妙円寺は福昌寺の兄寺にあたり、石屋の兄である南仲景周が開山した広済寺で、石屋は修行を積みました。

1470年には、一時廃寺同然となっていた妙円寺を、福昌寺六代住職の愚丘妙智が復興させました。愚丘は、仏像や仏堂を整え、寺を再興したことから、「中興の祖」とされています。島津氏歴代当主からの崇敬も厚く、特に島津義弘は深く帰依し、自身の菩提寺と定めました。義弘は、生前に仏師・康厳に自身の木像を彫らせ、それを弔うように指示しました。また、妙円寺には500石の寺領が与えられ、義弘とその妻の墓所となったことで、薩摩藩内でも有数の禅寺としての地位を確立しました。「妙円寺詣り」という言葉は、本来この寺を指しています。

しかし、1625年と1750年には火災に見舞われ、1835年には全焼してしまいました。焼失を免れた島津義弘の木像は、一時雪窓院に安置されましたが、再建された妙円寺に戻されました。この時の行列は、大名行列を小規模にしたものでした。伊集院郷士は、義弘の木像に新年を祝う言葉を述べる慣習があったと、松崎勘助貞範の日記に記されています。1843年の『三国名勝図会』には、妙円寺の寺領は375石と記載されています。また、同書や『薩藩名勝志』には、寺の境内に鎮守社があったことも記録されています。

廃仏毀釈と再興

明治維新後の廃仏毀釈により、妙円寺は破壊され、住職は宝物を持って避難を余儀なくされました。しかし、1880年には、地元の人々の支援によって、寺の近隣に再興されました。一方で、徳重神社の所有となった宝物は、返還されませんでした。当時、薩摩藩内では多くの寺院が廃絶され、僧侶も還俗させられる状況でしたが、妙円寺は再興を果たした数少ない寺院の一つです。

再興後の妙円寺は、以前より規模が縮小されましたが、島津義弘の位牌は守られ、境内には1936年に島津忠重が寄贈した石屋真梁の石碑が建てられました。この石碑の碑銘は、陸軍大将の町田経宇によって書かれています。

妙円寺は、鹿児島本線伊集院駅の案内には記載されていませんが、日置市によって設置された案内看板により、その存在を知ることができます。また、徳重神社の境内にある解説板やパンフレットにも、妙円寺の再興について記述されています。近年では、61代住職の伊藤憲一が韓国の禅寺との交流を深め、韓国人強制徴用者物故者供養祭にも参加しています。

谷山大観音

妙円寺が管理する谷山大観音は、鹿児島市下福元町に位置する金色の観音像です。この観音像は、61代住職の伊藤憲一の代に台湾で製作され、1990年代初頭に妙円寺によって建立されました。観音像の台座部分は納骨堂となっており、周囲には墓や地蔵が並んでいます。

入口には、商売繁盛、合格祈願、縁結びを願う「ろうそく祈願」の案内看板が設置されています。以前は「妙円寺谷山出張所」と表記されていた入口看板は、現在は「清泉寺観音堂」となっており、寺務所も「清泉寺寺務所」と表記されています。これは、観音像の所在地がかつて清泉寺があった場所の近くであるためと推測されます。納骨堂の建物も「清泉寺大観音堂」と表記され、かつては清泉寺の名が入った納骨堂分譲の旗も立てられていました。

妙円寺は、歴史的な変遷を経て、現在も人々の信仰を集める寺院です。その歴史や文化的な価値は、現代においても大切にされています。

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