姫路大博覧会

姫路大博覧会（ひめじだいはくらんかい）は、1966年（昭和41年）の春、兵庫県姫路市で開催された大規模な地方博覧会です。姫路城の荘厳な姿を取り戻した昭和の大修理の完成を祝し、同年4月3日から6月5日までの約2ヶ月間にわたり開催されました。手柄山公園を主会場とし、城南地区および名古山地区を含む計3つの会場が設けられ、期間中にはおよそ150万人もの人々が訪れ、当時の姫路に大きな賑わいをもたらしました。

会場と主な展示

博覧会は以下の3つの会場で展開されました。

中央会場

現在の手柄山公園が博覧会のメイン会場となりました。ここでは、未来の科学技術や産業、文化などを紹介する様々なパビリオンが立ち並びました。現在も手柄山公園に残る西洋の城郭を思わせる建物や、展望施設は、当時のパビリオンの遺構です。会場内には来場者の移動手段としてロープウェイなども運行されていました。

主要なパビリオンとしては、姫路の地場産業、特に当時基幹産業の一つであったマッチ製造に焦点を当てた姫路館がありました。また、「未来の姫路」と題されたジオラマ展示では、将来の姫路都市圏の姿として、現在の姫路バイパスや中国自動車道と連携する環状道路、市北西部へのモノレール路線、さらにはFM・TV局の電波塔などが描かれており、当時の描いた都市像を垣間見ることができました。

その他にも、IHIなどが出展し大型タンカーの模型などを展示した近代工業館、未来の電力技術を紹介した電力館（関西電力）、放送技術に触れる電波館（NHK）、国内主要メーカーの最新型自動車が並ぶ自動車館、国鉄や日本航空が未来の交通システムを描いた交通科学館（まだ姫路に延伸していなかった新幹線や最新鋭のボーイング727の模型を展示）、姫路の主要産業である繊維産業を大規模に紹介した繊維館、海外の協賛国が出展した国際館（特にドイツ館が大規模でした。また当時国連加盟国だった中華民国のパビリオンも）、専売公社と三和銀行による古銭・たばこ館、実物の潜水艇を展示した海底探検館、ラムダロケットやジェミニ宇宙船を展示した宇宙館など、多岐にわたる分野の展示が行われました。他に安全館、生活科学館、子供の国館、観光めぐり館、農林水産館、播磨館なども開設されました。

中央会場のシンボルタワーとして建設された姫路博テーマ塔は、ロサンゼルス国際空港の管制塔をモデルにした展望塔でした。博覧会閉幕後も展望台部分は回転レストランとして営業を続けていましたが、2018年に営業を終了しました。建物自体はモニュメントとして現存しますが、内部は立ち入りできません。

城南会場

大手前公園には防衛館が開設されました。これは陸上自衛隊姫路駐屯地の協力により実現したもので、当時の自衛隊が運用する兵器や航空機などが展示されました。主な展示物として、F-86戦闘機、61式戦車、M4中戦車、M24軽戦車、ナイキミサイルなどが並びました。また、旧日本陸軍の三式戦闘機「飛燕」も展示され、注目を集めました。

博覧会会期中には、様々な特別イベントも開催されました。開会式当日の上空では、航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」が見事な曲技飛行を披露し、多くの観客を魅了しました。また、陸上自衛隊による戦車やヘリコプターの体験搭乗が頻繁に行われたほか、姫路港では海上自衛隊の護衛艦などによる体験航海が3度にわたり実施され、来場者に貴重な体験の機会を提供しました。

名古山会場

名古山霊苑には、宗教や慰霊に関連する施設が設けられました。博覧会の開催を機に、インドのネルー首相から寄贈された仏舎利（釈迦の遺骨）を納めるための仏舎利塔が建設されました。高さ約37メートルのこの仏舎利塔は現在も名古山霊苑のシンボルとなっており、内部公開されておりドーム内側の壮大な仏教絵画を見学することができます。また、仏舎利塔の近くには、仏教各宗派の美術品を展示する宗教美術館も開設されました。この美術館も仏舎利塔とともに現在も存在しています。さらに、太平洋戦争末期に開発された人間魚雷「回天」を展示し、戦没者を慰霊するための回天館も設けられました。

アクセスと関連事項

博覧会の中央会場である手柄山へのアクセス手段として、姫路市交通局モノレール線が建設され、姫路駅から会場までを結んでいました。このモノレールは博覧会後も運行されましたが、後に休止・廃止となっています。

姫路市では、過去にも1936年（昭和11年）に姫路城敷地内で「国防と資源大博覧会」という博覧会が開催された歴史があります。姫路大博覧会は、戦後復興を経て高度経済成長期に入った日本の、そして姫路の勢いと未来への希望を示すイベントとして、多くの人々の記憶に残るものとなりました。

（参考文献：姫路商工会議所刊 '66姫路大博覧会誌、「広報ひめじ」姫路大博覧会特集号 1966年3月25日など）

もう一度検索