威奈大村

威奈 大村（いな の おおむら）

威奈 大村は、飛鳥時代に活躍した貴族であり、氏は猪名、姓は真人です。彼は威奈鏡公（鏡王）の三男であり、官位は正五位下・越後守に就任しました。彼の活躍は『続日本紀』や彼の墓誌に記されており、特に越後守としての功績が評価されています。

経歴

大村は天智天皇元年（662年）に生まれました。天武天皇の14年（685年）には冠位四十八階制で務広肆の職に就いたとされています。その後、藤原宮に移り、勤広肆や少納言に叙任されます。大宝元年（701年）には大宝律令に基づき従五位下に叙され、侍従の職も兼任しました。大宝3年（703年）に行われた持統天皇の葬儀では、御装長官の穂積親王を補佐する副官の一人に任命されました。

その後、大村は大宝4年（704年）に従五位上に昇進し、翌年には左少弁を兼任します。そして、慶雲2年（705年）11月16日には越後城司に任命され、次いで慶雲3年（706年）には越後守に就任しました。越後城は、大村の墓誌にしか記録が残っていないため、その役割については学者の間で議論されています。

当時の越後国は現在の新潟県の東半分を含む範囲で、エゾ地と接触する国境地帯でもありました。この地域は歴史的に重要な場所であったため、大村の治政については仁政が敷かれたと述べられています。慶雲4年（707年）2月、大村は正五位下に進みましたが、同年4月24日に越後で亡くなりました。享年は46歳で、遺骨は大和国に帰され、薮君里狛井山崗に埋葬されたと言われています。

威奈大村の骨蔵器

大村の骨蔵器は江戸時代の明和年間に見つかりました。発掘された場所は葛下郡馬場村の西に位置する穴虫山です。発掘の際、農民によって大甕の下から発見され、火葬された骨が入った円形の漆器があったと伝えられています。最初、発掘者はこの骨蔵器を黄金製と誤信しましたが、実際は銅製であることが判明しました。

その後、彼はこの骨蔵器を地元の安遊寺へ寄進しました。この漆器は浄土真宗の信者によって大谷本廟に納められました。地元の住民は墓誌の内容を解読できなかったため、布教のために訪れた僧侶の義端がその文学的価値を見出し、『威奈卿銅槃墓誌銘考』という研究を著しました。義端の友人である学者木村蒹葭堂もこの骨蔵器に魅了され、自ら調査を行い、『威奈大村墓誌銅器来由私記』を執筆しました。

さらに、秋里籬島の『大和名所図会』や松平定信の『集古十種』でもこの墓誌が取り上げられるようになりました。四天王寺の僧侶・諦順は大村の遺骨と骨蔵器を再び結びつけようとしましたが、これが実現することはありませんでした。骨蔵器は現在、同寺に所蔵されており、その逸話は文化財としての評価を高めています。

文化財としての評価

この骨蔵器は明治42年（1909年）に「銅壺（威奈真人大村卿骨壺）」として国宝に指定され、昭和30年（1955年）には「金銅威奈大村骨蔵器」に改名されて新国宝に認定されました。出土地は重要な歴史的隠れた場所で、大村の墓が存在した地域は官人の公葬地として利用されていたとされています。

また、この鋳銅製の球形骨蔵器には391字の漢文の墓誌が刻まれ、その内容は大村の経歴や学びを称賛する文で纏められており、当時の書風を代表する作品としても評価されています。木村蒹葭堂は明和7年（1770年）にこの墓誌を模刻し、書道の手本にするために利用しました。

以上のように、威奈 大村は飛鳥時代において重要な役割を果たした貴族であり、彼にまつわる文化財は今なお歴史の深い足跡を残しています。

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