孫嘉績

孫嘉績（そん かせき）は、明末の動乱期に活躍した官僚であり、軍人でもありました。字（あざな）は碩膚（せきふ）といい、その生涯は激動の時代を色濃く反映しています。

彼は紹興府余姚県を本貫とし、祖父の孫如游の流れを汲んでいます。1637年（崇禎10年）に科挙に合格し、進士となりました。当初は南京工部主事に任命され、その後、北京に召還されて兵部主事に転じました。

当時の明朝は、清軍の侵攻という未曾有の危機に直面していました。北京に清軍が迫る中、孫嘉績は敵の動きを冷静に見極めようとしました。他の官僚たちが清軍の意図を測りかねていた時、彼は「清軍は援軍を待っており、それが到着すれば大挙して南下してくるだろう」と予見しました。そのわずか3日後、モンゴル兵数万が青山口から侵入し、彼の予言は的中しました。この出来事により、尚書の楊嗣昌は彼の軍事的な才能を認め、孫嘉績を職方員外郎に任じました。その後、彼は郎中に昇進しました。

しかし、順風満帆とはいきませんでした。督師中官の高起潜によって、賄賂を受け取っているという無実の罪で誣告され、投獄されてしまいます。獄中では、同じく投獄されていた黄道周と親交を深め、彼の食事や薬の世話を献身的に行いました。その見返りとして、黄道周から『易経』を教授されたといいます。黄道周を救おうとした諸生の行動が、逆に崇禎帝の怒りを買い、黄道周は錦衣衛による厳しい尋問を受けることになりました。この時、多くの者が保身のために虚言を弄しましたが、孫嘉績は黄道周から教授を受けた事実を隠さなかったため、長期間拘留されました。最終的には、雑犯として死罪相当とされ、軍備の充実を妨げた罪にも問われましたが、いずれも事実無根でした。

幸いにも、保定総督の張福臻が崇禎帝に謁見した際、孫嘉績の才能を推薦し、彼を参謀として任用するよう求めましたが、容れられませんでした。その後、徐石麒が刑部尚書となると、彼の進言により、孫嘉績はようやく釈放され、南京で軍役につきました。

1644年（崇禎17年）、明朝が滅亡し、南明の福王政権が樹立されると、孫嘉績は九江兵備僉事に起用されましたが、赴任することはありませんでした。1645年（弘光元年）に南京が陥落した後、彼は熊汝霖と共に余姚で反清の兵を挙げ、魯王朱以海を紹興に迎え入れて監国としました。魯王政権において、彼は右僉都御史に抜擢され、東閣大学士にまで昇進しました。

しかし、南明の勢力は徐々に衰退し、1646年（監国魯元年）、魯王が海上に逃れると、孫嘉績はこれに従い舟山へ赴きました。その地で病に倒れ、43歳という若さでこの世を去りました。その功績を称え、忠襄という諡号が贈られました。

彼の子には、孫延齢がいました。

孫嘉績は、激動の時代に翻弄されながらも、その才能と忠義を貫いた人物でした。彼の生涯は、明末の混乱期における官僚たちの苦悩と、それでも希望を捨てずに戦い抜いた人々の姿を今に伝えています。

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