孫如游

孫如游（そん じょゆう、1549年 - 1624年）は、明代末期の官僚で、字は景文、号は鑑湖と称した。本貫は紹興府余姚県にあり、名門の家系に生まれた。

官僚としての生涯

都御史の孫燧の曾孫にあたる孫如游は、1595年（万暦23年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせた。当初は翰林院検討として学術的な職務に携わったが、その才能を認められ、1606年（万暦34年）には右春坊右賛善に昇進し、皇太子の教育にも関わるようになった。その後も順調に昇進を重ね、1610年（万暦38年）には南京翰林院事を代行、1612年（万暦40年）には右諭徳から右庶子へと進んだ。

1614年（万暦42年）には少詹事から詹事に昇進し、1615年（万暦43年）には礼部右侍郎・兼翰林院侍読学士に転じた。1619年（万暦47年）には、礼部尚書の事務を代行していた左侍郎の何宗彦が官を去ったため、大学士の方従哲の要請により、孫如游が尚書の事務を代行することとなった。1620年（万暦48年）3月には万暦帝の命により、正式に礼部尚書の事務を代行することとなった。礼部の事務は山積していたが、孫如游はこれを迅速に処理し、滞らせることはなかった。当時、白蓮教や無為教などの新興宗教が流行しており、かつて何宗彦が禁教を上奏していたが、孫如游もまた禁教を上申したため、万暦帝はこれに従った。

万暦帝崩御と後継問題

1620年7月、万暦帝が重病に陥ると、孫如游は他の重臣たちと共に遺命を受けた。万暦帝が崩御した後、鄭貴妃は李選侍と結託し、李選侍を新帝の皇后に擁立しようとした。李選侍もまた、鄭貴妃を皇太后に立てることを画策した。これに対し、楊漣は「皇長子の朱由校は李選侍に愛されておらず、もし李選侍が皇后になれば、嫡長子といえども将来どうなるかわからない」と危惧し、孫如游に「先帝の遺詔を盾に、皇太子の冊立を求めるべきだ」と提言した。孫如游もこれに同意し、新帝の即位3日目に遺詔を根拠に皇太子の冊立を求めた。

8月1日、泰昌帝が即位し、3日目に孫如游の提言を受け入れ、皇太子の冊立を決定した。しかし、泰昌帝は先帝の遺志に従い鄭貴妃を皇太后に立てたいと主張し始めた。孫如游はこれに対し、孝とは命に従うのではなく、礼に従うことだと主張したが、泰昌帝は聞き入れなかった。その後、孫如游は礼部尚書に進んだが、泰昌帝は皇太子の冊立を命じたものの、皇長子朱由校の体質が虚弱であるとして、冊立の時期を遅らせようとした。孫如游はこれに反対し、早期の冊立を求めた。

泰昌帝崩御と天啓帝即位

8月23日、泰昌帝は李選侍を皇貴妃に封じるよう命じ、その時期を早めようとした。孫如游は「まずは亡き孝端顕皇后と孝靖太后に尊号を贈り、郭元妃と王才人を皇后に封じるのが先決であり、貴妃の封は後にすべきである」と上奏した。泰昌帝はこれを許可したが、李選侍は貴妃の地位に満足せず、皇后の地位を求めて運動を続けた。29日、泰昌帝は廷臣を召し出し、李選侍は皇長子朱由校に迫って、彼女を皇后に立てるよう言わせた。これに対し、孫如游は「上は選侍を皇貴妃に封じたいと考えているので、手続きを進めるべきである」と述べ、泰昌帝もこれを承認した。しかし、翌日、泰昌帝は急逝し（紅丸の案）、後継問題が再び浮上した。

孫如游は急遽冊封の時期を改めるよう請願し、天啓帝の許可を得た。天啓帝は皇孫時代に十分な儒教教育を受けていなかったため、孫如游は新帝の即位7日目に儒教経典の講義を開きたいと請願し、これも許可された。

10月、孫如游は東閣大学士として入閣し、枢機に参与するようになった。孫如游は度々退任を願い出たが、天啓帝は慰留に努めた。1621年（天啓元年）には14回にわたって辞任を願い出て、ようやく認められ、太子太保・文淵閣大学士の位を加えられて郷里に帰った。1624年（天啓4年）に死去し、享年76歳。死後、少保の位が追贈され、諡は文恭と贈られた。孫に孫嘉績がいる。

孫如游は、明末の激動期において、皇帝の継承問題に深く関わり、その優れた判断力と強い意志で、朝廷の安定に貢献した人物であった。彼の功績は、後世においても高く評価されている。

参考文献

* 『明史』巻240 列伝第128

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