孫盛

孫盛（そん せい）

孫盛（302年 - 373年）は、東晋時代の歴史家であり政治家です。字は安国といい、太原郡中都県（現在の山西省太原市）の出身です。彼は三国時代の魏の重臣であった孫資の玄孫にあたります。

生涯

西晋末期、彼の父である孫洵は潁川郡太守を務めていましたが、戦乱に巻き込まれ命を落としました。孫盛は幼少の頃、戦乱を避けて江南へと避難しました。成長すると、その博学さと弁舌の巧みさで評判となりました。

東晋に仕官し、佐著作郎となります。生活は貧しく、親も高齢であったため、劉陽県令となり生活を支えました。その後、荊江二州刺史の陶侃に参軍として取り立てられ、後任の庾亮にも引き続き仕えました。

庾亮が征西将軍となると、孫盛は司馬を兼任し参軍を務めました。当時、丞相であった王導との間に陶侃の子である陶称の讒言により疑心暗鬼が生じましたが、孫盛が庾亮を説得したことで、庾亮は王導への不信感を解消しました。

庾翼が後任となると、孫盛は安西諮議参軍に任命され、後に廷尉正となりました。桓温が赴任すると、参軍として従軍し、成漢征伐に参加しました。桓温が自ら兵を率いて成漢に侵攻した際、孫盛は輜重を担当し、他の臣下と協力して敵を打ち破りました。この功績により、安懐県侯に封じられました。また、成都に入った際には、蜀漢の劉備の末裔である劉玄と対面しています。

その後、桓温に従い従事中郎となり、関中を経て洛陽にまで到達しました。呉昌県侯にまで昇進し、長沙郡太守に任命されました。若い頃の貧困生活から、出世後は利殖に励みましたが、桓温はこれを黙認しました。最終的には秘書監にまで昇り、給事中を加えられました。72歳で亡くなったとされています。

歴史家としての孫盛は、『魏氏春秋』、『晋陽秋』、『蜀世譜』、『異同雑語』などの著作を残しました。特に『晋陽秋』の執筆においては、権力者である桓温の北伐の失敗を率直に記述し、桓温や息子の書き直し要求を拒否しました。最終的には、桓温の敵であった前燕の慕容儁に著作を贈ることで、自身の文章を守り抜いたという逸話があります。

裴松之が『三国志』の注釈を付ける際、孫盛の著作は異聞を多く集め、人物評論に優れていることから頻繁に引用されました。裴松之は孫盛と習鑿歯を「異同を捜し求めて漏洩なし」と賞賛しましたが、史書の人物の発言を『左伝』などの典故で潤色する傾向がある点を批判しています。

子女

孫潜（字は斉由、豫章郡太守）
孫放（字は斉荘、長沙国相）

孫盛は、歴史家としてだけでなく、政治家としても東晋を支え、その生涯は多くの逸話に彩られています。彼の著作は、後世の歴史研究に大きな影響を与えました。

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