庾亮

庾亮（ゆ りょう）

庾亮（289年 - 340年）は、中国東晋時代の政治家です。字は元規。潁川郡鄢陵県（現在の河南省許昌市鄢陵県）の出身で、庾琛の子として生まれました。庾冰、庾文君、庾翼の兄にあたります。

生涯

西晋時代、名門貴族の家に生まれた庾亮は、若い頃から美貌と威厳を備え、清談の名手として知られていました。その才能は夏侯玄や陳羣に匹敵すると評されたほどです。八王の乱や永嘉の乱により中原が混乱に陥ると、父に従って会稽へと避難しました。

その後、琅邪王司馬睿（後の元帝）に才能を認められ重用されるようになります。司馬睿の妹である庾文君は、後の明帝となる司馬紹に嫁ぎました。司馬睿が皇帝として東晋を再興すると、庾亮は給事中、黄門侍郎、散騎常侍などの要職を歴任し、王敦の推挙により中領軍に任命されました。

322年、明帝が即位すると、皇太子時代から親交のあった庾亮を中書監に任命しようとしましたが、庾亮は固辞しました。この時の辞表は、『文心雕龍』で名文として高く評価され、『文選』にも収録されています。

325年、明帝の崩御に際し、庾亮は司徒の王導と共に遺詔を受け、幼い成帝を補佐することになりました。外戚として権勢を振るい、寛大な王導とは対照的に、皇帝の権力強化を目指し厳格な法治主義政策を推し進めました。

しかし、その厳格な政治手法は多くの反感を買い、陶侃や祖約らの不満を買うことになります。蘇峻の軍事力を削ぐために首都への召還を試みたことが、咸和2年（327年）に蘇峻の乱を引き起こす原因となりました。建康は占領され、成帝は幽閉されるという事態に陥ります。

庾亮は弟の庾翼らと共に石頭城を脱出し、温嶠のもとに逃れました。温嶠の勧めで、陶侃に救援を要請することになります。かつて庾亮に恨みを抱いていた陶侃でしたが、その美貌と立ち居振る舞い、倹約を重んじる姿勢に感銘を受け、協力を承諾しました。ここに庾亮は蘇峻討伐の兵を挙げ、咸和4年（329年）に反乱を鎮圧することに成功しました。

乱の平定後、庾亮は責任を取り中書令を辞任、政務を王導に委ね、自らは平西将軍・豫州刺史として蕪湖に鎮し、北方の防衛に尽力しました。334年に陶侃が死去すると、その後任として征西将軍・荊州刺史となり、西府軍団を率いることになります。庾亮は、郗鑒と連携して王導を排斥しようとしましたが、郗鑒の反対により断念しました。その後は西府軍団の領袖として影響力を増し、中央で中書令を務める弟の庾冰と共に、庾一門の権勢を再び拡大しました。

後趙の石勒が死去したことを好機と捉え、中原回復を目指して襄陽への鎮を上奏しましたが、339年に北伐の拠点となる邾城が後趙に陥落したため、計画は頓挫。庾亮は責任を取り、位を三等落とすよう上奏しました。北伐計画の挫折に落胆した庾亮は、病に倒れてしまいます。

同年、王導が死去すると、司徒・揚州刺史・録尚書事として朝廷に召還される詔勅を受けましたが固辞し、340年に死去しました。死後、太尉を追贈され、文康公と諡されました。西府軍団は庾翼が引き継ぎましたが、庾翼の死後、桓温に受け継がれました。

家庭

弟妹
庾懌：東晋の将軍。後に毒酒で江州刺史の王允之の暗殺を謀り失敗、自殺。
庾冰：東晋の将軍。蘇峻の乱後、庾亮に代わり中書監などを歴任。
庾文君：明帝の后。
庾條：東晋の将軍。
庾翼：東晋の将軍。西府軍団の後継者。
庾氏：何充の妻。
子女
庾会：蘇峻の乱で死亡。
庾羲：呉国内史。
庾龢：東晋の官僚。

伝記資料

『晋書』巻73 列伝第43

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