孫科

孫科（そん か）の生涯

孫科（そん か、1891年10月20日 - 1973年9月13日）は、中国の政治家であり、革命家・孫文の長男として知られています。字は哲生。母は盧慕貞。彼は、国民政府において要職を歴任し、中国の近代史において重要な役割を果たしました。孫科は、その生涯を通じて、中国の政治と社会に大きな影響を与えました。

若年期と教育

1895年、孫科は父・孫文とともにサンフランシスコに渡り、キリスト教系の学校で教育を受けました。その後、1910年には中国同盟会に加入し、政治活動に足を踏み入れます。学業においては、カリフォルニア大学バークレー校を卒業し、コロンビア大学で経済学修士号を取得するなど、高い教育を受けました。

政治活動の開始

1917年8月に帰国した孫科は、護法運動を開始した父・孫文の下で、大元帥府秘書兼外交部秘書に任命されました。1920年11月には、広州市政庁長兼治河督弁に任命され、その後、広州市の初代市長に就任します。広州市長時代には、都市建設に力を注ぎ、有能な行政官としての評価を得ました。

1922年8月には、中国国民党改進案起草委員会委員に任命され、翌年には党臨時中央執行委員会委員として、第1回全国代表大会の準備に携わりました。1925年3月には、父・孫文の臨終に立ち会っています。

国民政府での活動

1925年7月、大元帥府が改組され国民政府が成立すると、孫科は国民政府委員、中央軍事委員会委員に任命されました。翌年には国民党第2期中央執行委員に選出され、広東省建設庁長兼政府委員にも任命されました。この時期、広州市長時代と同様に、優れた行政手腕を発揮し、都市建設に多大な成果をあげました。

反蔣介石運動への参加

1926年12月、国民政府の武漢遷都に伴い、孫科も武漢に移り、国民党中央執行委員会常務委員、航空処処長などを歴任しました。蔣介石が南京に国民政府を樹立するなど、分裂状態となった際には、孫科は各派の合流のために奔走しました。1927年8月に各派が合流した後、孫科は中華民国国民政府組織法と中国国民党訓政綱領の起草に携わりました。その後、考試院副院長兼行政院鉄道部長兼交通大学校長に就任しました。

1931年、胡漢民が蔣介石に軟禁されると、孫科は蔣介石に反発し、反蔣介石派と連合して広州に国民政府を樹立しました。その後、満洲事変が発生したため蔣介石と和解し、1932年には行政院長に任命されましたが、蔣介石の支援を得られず、短期間で辞任しました。

立法院院長としての活躍

1933年、孫科は立法院院長に任命され、以後15年間その職を務めました。院長として、憲法起草委員会を組織し、中華民国憲法の策定に尽力しました。当初、議院内閣制型の統治機構を考案していましたが、蔣介石の意向により、総統に実質的な権力を持たせる内容に修正されました。1936年5月5日に憲法は公布されましたが、孫科は蔣介石の介入に不満を持ち、民主党派や中国共産党からも批判が噴出しました。

孫科の政治的立場は、対外的には「積極抗日、中ソ友好」であり、対内的には民主党派との連携を強めるというものでした。1937年には、中ソ相互不可侵条約を締結し、ソ連からの援助・借款の締結を実現しました。また、立法院院長として、憲法起草以外にも各種法制整備を担当しました。

その後の活動と晩年

1948年、孫科は副総統選挙に出馬しましたが、李宗仁に敗れました。同年11月には行政院院長に就任しましたが、蔣介石が下野すると、孫科も辞任しました。その後、フランス、アメリカに移住し、1965年に孫文生誕100周年記念大会に出席するために台湾を訪問しました。蔣介石の招聘により総統府資政として台湾に留まり、翌年には考試院長に就任しました。

1973年9月13日、孫科は心臓病により台北で死去しました。享年83歳。

その他の活動

孫科は、「ミカドは去るべし」と題した論文を発表し、天皇制廃止論を唱えました。これは、彼の進歩的な思想を反映したものでした。



孫科は、孫文の長男として、激動の中国近代史を駆け抜けた政治家でした。彼の生涯は、中国の政治史における重要な一ページであり、その功績は今もなお評価されています。

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