胡漢民

胡漢民（こ かんみん）：激動の時代を駆け抜けた革命家

胡漢民は、清朝末期から中華民国初期にかけて活躍した政治家であり、革命家です。中国同盟会時代から孫文を支え、国民党の重鎮として重要な役割を果たしました。しかし、その後の蔣介石との権力闘争は、彼の生涯を語る上で欠かせない要素です。

生い立ちと初期の活動

胡漢民は、地方官吏の家庭に生まれました。21歳で科挙に合格し、挙人の資格を得ます。1902年、呉敬恒らと共に日本へ留学し、弘文学院で学びますが、呉が日本政府によって追放される事件をきっかけに帰国します。その後、ジャーナリストや教師として活動し、1904年に再び日本へ留学、法政大学で法律を学びました。同期には、汪兆銘など、後に中国の歴史を動かす人物がいました。

1905年、孫文が中国同盟会を設立すると、胡漢民は廖仲愷と共にこれに加入します。同盟会の機関誌『民報』では、論客として活躍し、保皇派との論戦を展開しました。1907年、孫文が日本から追放されると、胡漢民も同行し、両広起義に参加しますが、失敗に終わります。その後は南洋で資金調達に奔走し、1909年には香港で同盟会南方支部の支部長に就任しました。

辛亥革命と民国初期の活動

1911年、武昌起義が勃発すると、胡漢民は広東で革命派を指導し、広東の独立を宣言、都督に推戴されます。1912年、南京臨時政府が成立すると、孫文を補佐する大総統秘書長に任ぜられます。しかし、孫文が臨時大総統を辞任し、袁世凱が大総統となると、胡漢民は広東に戻り、都督となります。その後、宋教仁が国民党を結成すると、胡は広東支部長となります。

1913年、宋教仁が暗殺されると、胡漢民は袁世凱に反発しますが、広東都督を罷免されます。そのため、第二次革命に参加できず、孫文らと共に日本へ亡命します。1914年には、中華革命党の政治部長に就任します。1917年、孫文が広州で護法運動を開始すると、胡漢民は交通部長に任命されますが、護法軍政府の改組により実権を失い、孫文と共に上海へ去ります。その後、雑誌『建設』を創刊し、五四運動や新文化運動を支持しました。

1921年、孫文が非常大総統となると、胡漢民は総参議に任ぜられました。

国民党成立後の活動

1924年、国民党第一回党大会で、中央執行委員会委員に選出されます。孫文が北伐を開始すると、胡漢民は広東の留守を任され、広東省長を兼任します。孫文の死後、大元帥代理となりますが、反共右派の立場を鮮明にし、共産党粛清を主張します。しかし、容共左派の指導者であった廖仲愷が暗殺されると、首謀者として疑われ、ソ連へ事実上亡命することになります。

1927年、蔣介石が上海クーデターを起こすと、胡漢民は蔣介石を支持して復帰し、南京国民政府の要職を歴任します。『訓政綱領』と『国民政府組織法』の制定を主導し、蔣介石が国民政府主席、胡漢民が立法院長に就任しました。

蔣介石との権力闘争

蔣介石が権力を掌握すると、胡漢民はこれに反発し、訓政時期約法の制定をめぐって対立します。胡は、孫文の遺教に反するとして約法制定に反対しましたが、これは蔣介石のリーダーシップ強化に対する抵抗でした。蔣介石は、胡を立法院長から解任し、軟禁します。この強硬策は、胡支持派からの反発を招き、反蔣の広州国民政府が樹立される事態となります。

満州事変を機に、抗日を求める世論が高まり、蔣介石は胡漢民を釈放し、南京・広州両派は再合流します。その後も胡は、広州を拠点に「西南派」の中心人物として影響力を維持しました。

1936年、胡漢民は広州で脳溢血により死去しました。享年58歳。

まとめ

胡漢民は、清末から民初の激動期を駆け抜けた政治家であり、革命家でした。孫文の革命運動を支え、国民党の要職を歴任しましたが、その後の蔣介石との権力闘争は、彼の生涯における重要な転換点となりました。彼の活動は、中国の近代史における政治変革を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

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