守護使不入

守護使不入について

守護使不入（しゅごしふにゅう）とは、鎌倉時代と室町時代において確立された、幕府が特定の公領や荘園における守護やその役人の立入りを禁じる制度を指します。この制度は、主に幕府の権威を背景に国司や領家との対立を避けながら、一定の地域で法律が適用されない状況を生んでいました。守護不入とも呼ばれ、歴史的には鎌倉幕府による権限の行使が背景にあります。

歴史的背景

鎌倉幕府

鎌倉幕府の時代、守護には大犯三箇条という特定の義務を遂行するための権限が付与されており、この権限に基づいて、守護自らが国内の公領や荘園に立ち入ることが許可されていました。しかし、幕府は、国司や領家、本所（権門）との摩擦を避けるために守護による干渉を制限する特別な地域、いわゆる不入地を設けました。この制度は、御成敗式目によってさらに明文化され、不入地に逃げ込んだ犯罪者は国司や領家によって追及され、その境界線で守護へ引き渡されることが定められました。

室町幕府

室町幕府の時代に入ると、守護はその権限を一層強化され、「刈田狼藉検断」や「使節遵行権」、さらには「段銭徴収権」などの新たな広範な権限を与えられました。その結果、幕府の御家人は足利将軍家の権威を背景に、守護からの段銭徴収を拒否し、幕府に直接納付することが許されるようになりました。これにより、見た目上は守護大名の領域に治外法権地域が生まれたようにも見えましたが、実際には幕府の権力を支える支持の形成に繋がり、守護大名の権力拡大を抑制する効果を持っていました。

戦国時代の変化

戦国時代に入ると、幕府の権威が低下し、多くの戦国大名は自らの力で領国を形成していきます。この時期、守護使不入の特権は否定され、戦国大名たちはこの権限を自ら付与・剥奪するようになりました。また、かつては幕府に従ってきた守護大名の中にも、領国を維持する名目で、この権利を公然と否定する者が現れました。

例えば、1498年に越後守護の上杉房能は越後国内における守護使不入の主張を認めないと宣言しました。さらに、駿河守護の今川氏親は、幕府の許可なしに遠江の守護斯波氏を追い、検地行為を行いました。そしてその子の義元は、幕府の権力に頼らず自らの領国を治めることを明言しました。このようにして、戦国大名たちは幕府の権威を超えて自らの統治を行うことが当たり前となったのです。

まとめ

守護使不入の制度は、鎌倉・室町時代から戦国時代にかけての大名の権限や幕府の権力構造を理解する上でファンダメンタルな要素です。戦国時代に大名たちがこの制度を否定したことは、彼らの独立性や自我の確立を象徴する出来事であり、日本史において重要な転機を迎えることとなりました。

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