安寿と厨子王丸 (映画)

映画『安寿と厨子王丸』の紹介

『安寿と厨子王丸』（あんじゅとずしおうまる）は、1961年7月19日に公開された東映動画の劇場用アニメーション映画です。この作品は東映の創立10周年を記念して制作され、社長の大川博自らが予告フィルムに出演するなど、特別な意義を持つ作品となっています。主題歌や役者のキャスティングに至るまで、同社の技術や芸術センスが随所に表れています。

概要

本作は、実写映像に基づいたアニメーション手法である「ライブ・アクション方式」を一部に採用しています。この手法は、リアルな動きをキャッチするために用いられ、登場キャラクターの表情や動作に生気を与えています。映像表現において他に類を見ないユニークな試みであり、視覚的な魅力が豊かです。

原作となる物語『安寿と厨子王丸』は、中世から続く悲劇的な内容を含んでおり、演劇や浄瑠璃、童話などさまざまな形式で語り継がれてきました。この作品では、厨子王丸の肉親や家を奪われた悲劇的な運命が丁寧に描かれていますが、仲間との戦いを通じて復讐を果たす姿は描かれず、深い感動を与える一方で、カタルシスに欠ける部分もあります。この映画が制作された背景にはスタッフ間の意見対立もあり、その中で誕生した作品であることが特筆されます。

ストーリー

物語の主な舞台は、岩城判官正氏の家族です。安寿と厨子王丸の姉弟は、上司の鬼倉陸奥守から嫁を求められ拒否した結果、悲惨な運命に巻き込まれます。正氏は無実の罪で都へ連行され、母や動物たちと共に姉弟は生き別れになってしまいます。この時に、船上で溺死した菊乃は人魚となり、後に人買いを冤罪の渦に沈める運命を背負います。

姉弟は山椒大夫の元に売られ、そこで災難に見舞われながらも、次第に女と男という特別な絆を深めていきます。安寿は自ら池に入水し、その姿は白鳥へと変わります。物語の結末では、厨子王丸は多くの冒険を経て力をつけ、父親の名誉を取り戻します。しかし、安寿の死と悲劇は消えず、彼の心には深い喪失感が残ります。

スタッフとキャスト

この作品の演出には、藪下泰司、芹川有吾が名を連ね、脚本は田中澄江が担当しました。アート面では、山本早苗らによる優れた動画監修や、大塚晴郷の撮影技術が光ります。

声優陣には、安寿を演じる佐久間良子をはじめ、厨子王丸役の北大路欣也や、母八汐の山田五十鈴などが名を在籍させ、多彩なキャラクターを表現しました。

評価と影響

『安寿と厨子王丸』は多くの映画好きに愛され、さまざまな推薦を受け、その価値が認められています。リミニ国際映画祭で監督賞を受賞するなど、国内外で高い評価を獲得しました。物語の深遠さと視覚的魅力、そしてメッセージ性は、今もなお観衆に感動を与え続けています。作品は2002年にDVDとして再リリースされ，多くの新しい視聴者にも触れられる機会を持つに至りました。

もう一度検索