宋雲

宋雲（そう うん）は、北魏時代に活躍した官人であり、また僧官であった可能性も指摘されています。彼は、沙門（僧侶）の恵生（えしょう）と共に、仏教の経典を求めて西域へと旅立ちました。彼の旅は、単なる宗教的な巡礼にとどまらず、当時の西域諸国の様子を詳細に記録した貴重な歴史資料となっています。

生涯

宋雲は敦煌の出身で、北魏の孝明帝の時代、神亀元年（518年）11月、霊太后胡氏の命を受け、崇立寺の僧侶である恵生、法力らとともに、天竺（インド）を目指して出発しました。北魏の都・洛陽を旅立ち、吐谷渾（とよくこん）、鄯善（ぜんぜん）、于闐（うてん）といった西域の国々を経由し、旅を続けました。

彼らはエフタル王に謁見した後、波斯（ペルシア）、賒靡国（しゃびこく）、缽盧勒国（はるろくこく）などを訪れ、神亀2年（519年）にはウッディヤーナ（烏仗那）国に到着しました。この地で、宋雲は国王に孔子、老子、荘子の学説を講義したと伝えられています。その後、宋雲と恵生は天竺各地を巡礼し、仏教の聖地を訪れました。正光元年（520年）4月にはガンダーラなどを訪問しています。そして、正光3年（522年）には、大乗仏教の経典や論書170部を携えて洛陽へと帰還しました。彼の住居は洛陽の聞義里という場所にありました。

宋雲は、『魏国以西十一国事』という著書を著したとされています。また、『宋雲家記』という著作があったとも伝えられていますが、いずれも現存していません。『旧唐書』「経籍志」や『新唐書』「芸文志」に『魏国以西十一国事』1巻が記録されていますが、残念ながら散逸してしまいました。また、『洛陽伽藍記』巻5に付された宋雲と恵生の記事は、別名「宋雲行記」とも呼ばれています。

宋雲の西域への旅は、北魏時代の仏教や西域諸国の実情を理解するための貴重な資料となっています。彼の記録は、当時の文化交流や宗教的な影響を知る上で非常に重要な役割を果たしています。宋雲が持ち帰った経典は、北魏の仏教の発展に大きく貢献し、彼の功績は後世にまで語り継がれています。

参考文献

魏収撰『魏書』巻102「西域伝」、巻114「釈老志」
楊衒之撰『洛陽伽藍記』巻5
道宣撰『釈迦方誌』巻下「游履篇第五」
E. Chavannes‘Voyage de Song Yun dans et le Gandhara, 518-522’（BEFEO、1903年）

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