官秉忠

官秉忠（かん へいちゅう、生没年不詳）は、明代の軍人であり、楡林衛を本貫とします。彼の生涯は、軍事的な功績と、それに伴う政治的な変動に彩られています。

若き日の台頭

万暦年間、官秉忠は代々の蔭官の恩恵を受け、軍人としてのキャリアをスタートさせました。当初は固原参将として頭角を現し、その才能が認められて寧夏・甘粛副総兵に抜擢されました。主将の達雲と共に、紅崖での戦いにおいて松山・青海部を打ち破り、銀定・歹成といった強敵を退けるなど、その軍事的な手腕を早くから発揮しました。その後、彼は薊州鎮東協に転出し、守備の任にあたりながらも、着実に功績を重ね、最終的には署都督同知の地位を授けられました。

延綏での活躍

万暦40年（1612年）5月、官秉忠は総兵官に抜擢され、張承廕の後任として延綏に駐屯することになります。延綏赴任後も、彼の武勇は衰えることなく、オルドス部が保寧堡を侵犯した際には、参将の杜文煥らを率いて白土澗でこれを撃破し、一日で再び勝利を収め、250人もの敵を捕斬し、首長12人を討ち取るという大戦果を挙げました。さらに、旗牌撒勒が長楽堡に侵入した際には、自ら軽騎を率いて追撃し、これを打ち破りました。また、猛克什力が保寧堡に侵攻した際も、彼はこれを撃退し、その卓越した軍事能力を証明しました。万暦42年（1614年）には、猛克什力が再び保寧堡と懐遠堡を攻撃してきましたが、官秉忠は精鋭の騎兵を率いて果敢に迎撃し、220人以上を斬首するという勝利を収めました。猛克什力と旗牌撒勒が1000騎以上の大軍を率いて波羅堡に侵入した際には、保寧軍の出動を察知して、塞外へと逃走しました。

苦境と栄光

万暦43年（1615年）には、ボショクト・ジノンの子である吉能がオルドス諸部を糾合して大挙侵入し、東道の高家堡・大柏油堡・神木堡・柏林堡、中道の波羅堡、西道の磚井堡・寧塞堡など、多くの城堡が蹂躙されました。延綏副将の孫洪謨は大柏油堡を守ろうとしましたが、伏兵に遭い包囲され、救援が来ないまま、多くの兵士が死傷し、降伏を余儀なくされました。官秉忠は游撃の張榜を派遣しオルドス部の陣営を襲撃させましたが、敗れて400人以上の戦死者を出すことになります。しかし、元総兵の杜松や寧夏総兵の杜文煥の援軍が到着し、彼らが敵を破ると、官秉忠の部隊もこれに続き、オルドス部を撤退させることに成功しました。その後も諸部の侵入は相次ぎ、官秉忠はたびたび出撃して功績を挙げましたが、政敵からの弾劾を受けて官を去ることになります。総兵官交代の際には、沙計が双山堡・建安堡から侵入を試みましたが、官秉忠はこれを待ち伏せして破り、200人以上を斬首するという、最後の戦いでもその勇猛さを示しました。

晩年とその後

万暦46年（1618年）、官秉忠は劉綎、柴国柱らと共に北京に召喚され、僉書前府の役職を与えられました。その後、遼東の救援に向かうことになりますが、万暦47年（1619年）、楊鎬が後金を討つべく軍を四路に分けて出兵した際には、鎮城の守備を命じられました。しかし、間もなく病に倒れ、職を辞して帰郷し、長らくの時を経て死去しました。

官秉忠の息子である官撫民もまた、父の跡を継ぎ、寧夏総兵官に任じられました。官秉忠の生涯は、明王朝の辺境防衛における重要な役割を担い、その軍事的な才能と功績は歴史に深く刻まれています。

参考文献：『明史』巻239 列伝第127

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